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放課後の憂鬱   第10章 陥穽(2)


  
                                          


【第10章 (2)】



        
        伊藤はカメラを覗き込んでしきりに調整している。

        「う~ん、OKです。」

        伊藤の返事を聞くと、高科が藍に声をかけた。

        「さぁ、藍ちゃん、そろそろ着替えてもらおうか。」
        「えっ? 着替えるんですか?」

        藍は朝、高科と会った時に「制服のままでいい」と言われていたので、
        怪訝な面持ちで聞き返した。

        「うん。着替えてね。」
        「・・はい。わかりました。じゃあ、着替えてきます。」

        藍は解せなかったが、素直にそう返事をした。

        (更衣室に行って来なくちゃ・・・)
        (あっ、その前に教室から体操服とって来なくっちゃ・・・)

        藍は、最初から言ってくれればいいのに・・と思いながら、歩き出そう
        とした。
        その時、ゆうこが呼び止めた。

        「ちょっと、藍ってば。どこ行くの?」
        「えっ? 更衣室に・・・」
        「行かなくていいわよ。」
        「だって、着替えろって・・」
        「更衣室じゃなくってぇ・・ここで、着替えるの。」

        「・・ここで?」
        「そう。ここで、よ。みんなの前で、着替えることになってるの。」
        「そんな!?」

        藍は戸惑ってしまった。ゆうこの言う意味が分からなかった。
        すると、今度はさちが寄ってきて話しかけた。

        「藍が休んでる間にね、また台本変わったの。今日はね、主人公が捕え
        られて、囚人服に着替えさせられるトコロ、撮ることになってるの。」

        ゆうこが更に続けた。

        「相談できなくって悪かったけど、藍ったら学校来なかったから。それ
        でねぇ、看守役と区別するためにさ、体操服じゃなくってぇ・・・これ
        に着替えて欲しいんだけど。」

        そう言って藍に、紙袋を手渡した。

        「・・これって?・・」

        藍は袋の中を取り出すと、目の前に広げてみた。光沢のあるオレンジ色
        のレオタードだった。手にとってみると、ゴムのように伸縮性のある、
        かなり薄い生地でできていた。

        藍は慌てて高科に言った。

        「ここでって・・そんなの・・いやです。できません!」

        高科が急に険しい顔をみせた。声も低くなっている。

        「なに、出来ないって?・・・困るなぁ。二日も休まれて、ただでさえ
        時間ないのに・・・そのうえわがまま言われちゃなぁ・・」
        「わがままって・・・そんな!」
        「だってわがままじゃないか! ここまで撮ってきて、今更出来ないな
        んて言われたら・・俺たち頑張ってきたの水の泡なんだぜ? 違う?」
        「で、でも・・ここで着替えるなんて・・」

        すると、横から吉田が口を出した。

        「藍ちゃんが恥ずかしいってのはわかるけどさぁ。藍ちゃんはもうそん
        な事、言えないんじゃないかなぁ。まぁどうしてもいやだって言うなら、
        こっちにも考えがあるけどね。」

        藍は高科が怖い顔になったまま黙っているのと、吉田のいう「考え」が
        どんな考えなのかわからず、ますます不安になった。





※ この作品は、ひとみの内緒話管理人、イネの十四郎様から投稿していただきました。
  尚、著作権は、「ひとみの内緒話」及び著者である「ジャック様」に属しております。
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