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ピンクの傀儡子、見参!!






















【第3話】



        
        あたしの名前は北原雪音。
        市内の高校に通う現役女子学生なの。
        知能レベルは中の下、運動レベルは中の上。
        スリ―サイズは超シークレットだけど、将来に向けて大いに期待かな。
        肝心のお顔の方は、うんうん♪ これだけは堂々と自慢してあげる! 
        宣言してあげる!

        びしょうじょ! ビショウジョ!! 美少女!!!

        こっそり、はっきり、テレビに出てくる瞳キラキラアイドルより可愛い
        って。
        ちょっと自惚れを込めて、うふふふ♪♪

        そして我が相棒、お父さんの名前は北原武雄。
        通称シャッター通り商店街で、写真館を経営しているの。
        名前だけで判断したら、頑固オヤジで生意気な娘のほっぺたをパッチー
        ンなんだけど、実際はねぇ……ごにょ、ごにょ、ごにょ……
        気弱で頼りなくて、優柔不断で、全然お父さん役をこなしてくれなくて、
        それなのに趣味の写真撮影になると見境が付かなくなって、気が付けば
        借金の山を大盛りでこしらえる超スーパーなダメオヤジなの。

        だからお母さんは実家に帰ったまま戻って来てくれない。
        父娘家庭を始めて早3年。
        雪音はお母さんの分まで、お料理、お洗濯、主婦の特権立ち話。
        夫婦のスキンシップ、夜の営みはパスだけど……
        とにかくだよ。全然輝けない青春生活を送っているわけ。



        「ねえ、お父さん。この前のネガ。いくらで売れたの?」

        あたしはいつもの『北原写真館、撮影スタジオ兼、自称、北原雪音・宿
        題丸写しの部屋』で、これまたいつものように宿題をしながら、いつも
        の感じでお父さんに聞いた。

        「あ、えぇっと……えぇっ~と……どうだったかな? ははは、お父さ
        んは忘れちゃったなぁ」

        「ちょっとぉ、頭掻いてごまかさないでよね。ねぇ……ホントに送って
        くれたの? 雪音の現役女子高生の無修正バージョン」

        「う、うん……そのぉ、送ったような? 送らなかったような? ごめ
        んなさい!」

        突然お父さんの姿が、店の奥から消えた。
        まるで瞬間移動したみたいに、すっと飛んで、あたしの前で土下座して
        いる。

        「まさか……まさかだよ。お父さん、雪音のことを思って没にしてくれ
        たの? 嫁入り前の娘のエッチな写真を人目に晒したくないとか?」

        「ま、まあ……そんなところかな。へへへっ」

        瞬間移動したお父さんは、屈辱四つん這いポーズも一瞬だった。
        目を潤ませたあたしを見て、さっと立ち上がると照れたように頭を掻い
        ている。

        「嬉しい♪ とっても嬉しいぃっ! だけどね、けどね……グスン、グ
        スン」

        「雪音、そんなに嬉しいのか? お父さんもだよ……ううぅぅぅぅっっ」

        そして始まった親子涙の共演。
        一緒になって涙に鼻水までミックスさせて号泣してるけど、ホントにど
        うしよう?

        しゃっきん! シャッキン!! 借金!!!

        こうなったらもう、一か八かの『ピンクの傀儡子さん』に頼るしか道は
        ないよね。
        美少女娘のヌード写真集が援護射撃できないんだもん。
        そうよ、鬼才! 異才! 変態!
        お父さん……ふぁいとぉ~

        因みにお父さんは、『ピンクの傀儡子』というハンドルネームでブログを
        やっている。
        キャッチコピーは、『今すぐお金が入用の貴女!! ピンクの傀儡子が参
        上致します!!』
        要するに、お金が必要な女の人のエッチな写真を撮影して、ネットで売
        りさばく。
        その代金から、撮影料を徴収して残りの売上を当事者に渡すって感じか
        な。

        でもねぇ……
        お父さんがブログを立ち上げてから2年になるけど、お仕事の依頼が来
        たのって、たったの1件なのよね。
        それも、ちょっと変化球って感じのお仕事で……
        そう、久藤律子さんの件。
        詳しくは、前作の『シャッター・チャンス』をよろしくということで……

        でも今夜、記念すべき2件目のお仕事の予定が入っているの。
        その久藤さんの紹介で名前は確か……小野寺美帆(おのでら みほ)って、
        言ったかな。
        午後7時に来るって電話があったから、もうすぐよね。

        あたしは、おじいちゃんの代から働き続けている柱時計を見上げた。
        ついでに、カメラ小僧のような顔で、ひたすらレンズを磨き続けるお父
        さんと見比べた。

        「それで、どうする? 夕食は小野寺さんのが終わってからにする?」

        「いいけど……だったら雪音。夕食は特上の天ぷらそばでも取ろうか? 
        お向かいの『そばや並木』で」

        「特上の天ぷらそば……?」

        「借金返済の前祝いに景気よく。どう?」

        「だ~め。今夜はカレーなの。だからお父さん、小野寺さんのお仕事、
        『華麗』に決めてね♪」



        「えっ……えええぇぇっ!! セ、セックスしているところを撮影って
        ……?」

        あたしとお父さんは、同時に目を丸くした。
        当然のように、顔を見合わせた。

        「ですから、『ピンクの傀儡子』である、あなたにお願いしているんです。
        その……律子……いえ、久藤さんからお話を伺って、ここへ来ればなん
        とかなると……」

        小野寺さんは、最後の方は口ごもりながら、恥ずかしそうに目を伏せた。
        ここは、いつもの地下撮影スタジオにある、いつもの丸テーブル。
        雪音のエッチでムフフな写真撮影も、もちろんここで。

        「で、ですが……」

        ツン、ツン……

        お父さんも口ごもりながら、あたしの脇を突いてくる。

        「あの、小野寺さん……ううん、美帆さんって、呼んでもいいですか?」

        無理やりバトンタッチされたあたしは、丸いテーブルの向い側にいる美
        帆さんという女性を見つめた。
        彼女は、グーにした両手をテーブルの上に置いたまま、小さくうなづい
        てくれた。

        可愛い……!

        あたしより年上の人にこんな言い方は失礼かもしれないけど、一言で表
        現するとずばりこんな感じ。
        年齢は、律子さんより若くて、20代後半かな?
        髪型は、ちょっとブラウンがかったショートボブ。
        丸顔に大きめの瞳。
        口も大きめで、美人というよりチャーミングって言葉がぴったり。

        きっと笑うと、ホッペタの上にエクボが浮かんで、可愛い系のアイドル
        をそのまま10年くらいタイムスリップさせたら……多分こうなるんだ
        ろうな。
        でも、こんな可愛らしい女性が、どうして無茶な相談を持ちかけて来る
        の?

        「それで美帆さん。その愛し合うお相手は、夫婦だから、その……」

        「ええ、夫の毅(たけし)と……」

        美帆さんは、あたしの問いに小声で答えた。

        つまりこういうこと。
        結婚して3年。いつまで経っても子供に恵まれない小野寺夫婦は、熟慮
        に熟慮を重ねて思い付いちゃったの。
        私たちの、そのそのその……セックスがマンネリしているんじゃないの
        かって……?
        色んなお医者様に相談しても結果が出ないんだから、自分たちで行動す
        るしかないって……!

        だからって、写真撮影しながらの、そのそのそのセックスって大胆!
        というか、アブノーマルな愛し方なら他にもあるんじゃないかと……

        例えば、お互いのオナニーの鑑賞会でもしてみるとか?
        SMチックなお遊びがOKなホテルで、SMチックなお遊戯をしてみる
        とか?
        美帆さんに首輪でも嵌めて……別にお婿さんの毅さんでもいいけど、い
        けない遊びをしてみるとか?

        ……って、ダメダメ。
        花の女子高生が、こんなこと想像しちゃダメェェッ!!

        「おい雪音。顔が真っ赤だけど熱でもあるんじゃ……うぐぅッ!」

        「おほほほ……わかりました。あたし……じゃなかった、私たちにお任
        せください。つきましては、ご利用料金のご相談など……」

        真っ赤な顔のふたりの女性の横で、どうしたのかな?
        お父さんだけが、顔を真っ青にして白目を剥きかけていた。








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