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レッツ・バスタイム ?!























(二)


七月 十八日 金曜日 午後九時  早野 有里
 


        「ただいまーっ」

        続けて、お母さん怖かったよ!
        そう思わずしゃべりそうになって、わたしは慌てて口をつぐんだ。

        「あら、お帰り。何かあったの……?」

        ほら、感の良い彼女は気付き始めている。

        「ううん、なんでもない。それより……今日は早かったでしょ」

        「そうね、いつもよりね」

        ここは、急いで話題を変えなくちゃ。

        「うん。今日はもう帰っていいって、並木のおじさんが……
        後片付けは俺がやるからって。
        ……別に、押し付けたわけじゃないよ」

        なぜか後半早口でしゃべっていた。
        こんな言い方をすれば今日の頑張りが無駄になってしまうけど、今は仕
        方ない。

        「そうね、信じるわ。それより、お風呂が沸いているから先に入りなさい」

        「はぁーい」

        わたしは、わざと子供っぽい返事をしながら浴室に向かった。


        この人が誰なのか、きみにも分かるでしょ?

        そう。彼女がわたしのお母さん。
        名前は、君枝っていうの。
        お料理が上手で、何にでも良く気が付いて、それに優しくて……

        あえて短所を探せば、うーん、気が優しすぎること。
        悪く言えば気が弱い。
        それに、ちょっとオットリしていて運動は大の苦手。

        どちらかというと、負けず嫌いで身体を動かすのが大好きなわたしとは
        正反対……
        足して2で割れば丁度いいかも……

        顔なんか、未来のわたしにそっくり? だと思う。
        スタイルは、お世辞にも良いとは……

        少し前までは、昔の服がどんどん着られなくなって……
        ウエストがゴムのスカートばかり履いて……
        その割にわたしの倍くらいご飯だけ食べて……

        でも、そんなお母さん好きだったな。
        今は、何かあるとスグに涙ぐむ……
        これもお父さんの病気のせい?



        「暑いからって、烏の行水はダメよー」

        「わかってまぁーす。もう、いつまでも子供扱いして……」

        脱衣場に入ると、わたしは身に着けているものを1枚だけ残してサッと
        脱ぎ去った。

        えっ、残りの1枚……?
        ……そんなの……聞かないでよ。

        足元から吹き付ける扇風機の風が、スゥーッと肌に直接触れて、しばら
        くこのままでいようかなと思うくらい気持いい。
        それなのに「グゥーッ」と、お腹の鳴る音が邪魔をした。
        仕方ないから、早くお風呂に入って晩御飯を食べようかな。

        それではお待ちかね? の最後の1枚に手をかけ、両手でするすると肌
        上を滑らしていく。
        そして、紐状になったそれを足首から抜き取った。

        少し弱めの照明の下、洗面台の鏡に上半身裸の少女が映っている。

        誰のことって? 
        もちろん……わたし……
        中学、高校と運動部で鍛えたから、今のところ無駄な脂肪も一切なし。

        さあ、汗を流そうかな。
        わたしは浴室の扉を開くと中に入って行った。




           七月 十八日 金曜日 午後九時二十分   早野 君枝


        リビングの壁越しに有里の鼻歌が聞こえてくる。

        「もう、あの子ったら……」

        まだまだ子供ね、と言おうとして私は口を閉ざした。
        そして「ごめんね、有里。あなたにまで迷惑をかけて……」

        代わりに口をついたのは謝りの言葉。
        いけないと思いつつも、つい口走っている。

        あの人が入院してから確かに私の気持ちは弱くなった。
        何気ない言葉に胸が抉られたり、悲しみから涙が止まらないこともある。

        「少し、あの子の元気を分けてもらおうかしら」

        私は天井を見上げて気分を落ち着かせると、出来あがった料理を食卓に
        並べていった。
        あとは有里がお風呂から上がって来る直前に、お汁を温めれば出来あが
        り。

        お母さんが有里に出来るのはこのぐらい。

        「ごめんね」

        また同じ言葉を私は呟いてしまった。




           七月 十八日 金曜日 午後九時三十分   早野 有里  


        「ふーぅっ、いい気持ち……」

        熱めのお湯が今日1日の疲れを忘れさせてくれる。
        わたしは湯船の中でくたくたの手足を、マッサージするように揉みほぐ
        してあげた。

        あーっ、気持良すぎてこのまま眠ってしまいそう。
        ううん、本当に眠たくなってきた。

        このままではまずいなぁと思って、眠気を振り払うように頭を軽く振る
        と浴槽を出ることにした。

        「あー、ちょっと長く浸かり過ぎたかな。頭がくらくらする」

        ボーッとした頭の中、シャワーをぬるめにセットし、火照った肌を冷ま
        すように肩から背中にお湯を掛け流していく。
        そして滑らかな肌の感触を楽しむように、手のひらのスポンジでやさし
        く撫でる。

        自慢じゃないけど、わたしの肌って白くてきれい。
        背中からお尻も、ほら、染みひとつない。
        スタイルだって、それほど悪くないと思うよ。

        胸のふくらみもツンと前を向いているし、お尻のお肉も全く垂れていな
        い。
        ウエストも、モデル並みとはいかないけれど、キュッと締まっている。

        でもね。気になるところも、いっぱいあって……
        全体的に、なんというか子供っぽいというか、アンバランスというか……
        要するに成長途上の身体ってこと……

        特に、胸はもう一回り大きくなって欲しいな。
        高校生になった頃から急に発達し始めて、人並みにはなんとか追い付い
        たけど、まだまだ大人の女性って感じじゃないんだよね。
        青くて未成熟な果実ってとこ……

        それに男の人って巨乳が好きなんでしょ。

        だからテレビに出てくるアイドルって、ボヨーンッて感じで、わざと胸
        の谷間を強調したりフクラミがはっきりわかる服を着たりしているのか
        な。

        でもね……聞いた話だと、貧乳の方が感じやすいんだって……
        アレの時に甘い声をだすのは、そっちかもしれないよ。

        ……いやだ。自分で言って恥ずかしくなってきた。

        でも、それ以上に深刻なのはお尻の方かな。
        肌にも弾力があって、お尻の筋肉にぎゅっと力をいれるとヒップ全体が
        上を向いて……

        それのどこが不満って……?

        実はね、ヒップの大きさ。
        こっちは胸と違ってもう充分大人ってかんじ。

        胸が未成熟なら、お尻は完熟した果実。
        ……あっ、また言っちゃった。

        でも、これ以上は大きくなって欲しくないよね。
        だって、歩くたびにお尻が揺れるのって恥ずかしくない?

        ……えっ、見てみたいって?

        いやだよ。見せてあげない。

        ……これって、贅沢な悩みなのかな。
        でも、女性なら完璧なプロポーションに憧れるよね。

        さあ、前の部分もシャワーを掛けてお風呂から上がろっと。

        ねえ、いつまで見てるの……?
        これ以上は、だーめっ。

        わたしの大切な処は、誰にも見せないからね。




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