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少女涙の羞恥生活 31話 アップしました。

カテゴリーの 『少女涙の羞恥生活 31~40』 より、ご覧になってください

舞衣の贖罪























(三十一)


八月 二十一日 木曜日 午後三時  吉竹 舞衣
   


「あの、早野 勇さんのお見舞いに来たんですけど……部屋番号を教えてもらえないでしょうか?」

「では、この書類に住所とお名前をご記入ください」

B5サイズ程度の紙に、指定された項目を記していく。

「えー、早野さんなら、入院病棟の6階、604号室です」
ここのロビーを出られて、西側の建物になります」

書類を提出したわたしに、総合インフォメーションと記されたコーナーの職員さんは、親切に対応してくれた。
わたしはお礼を言うと、花束を手にロビーを後にする。

教えてもらった病棟はすぐに見つかり、わたしは入り口で暫く立ち止まった後、エレベーターへ向かった。

あら、また会ったわね。
あなた、有里と一緒にいなくていいの?
…… ……
……そう。
だったら、わたしに付き合ってもらっていいかな。
話したいこともあるしね。



「確か、6階だったよね……」

わたしは、フロアーを示すランプが上昇するに従い、早打ちする鼓動を押えられずにいた。

落ち着いて、舞衣。
これが、あなたの望む贖罪の第一歩なのよ。

自分に、何度も言い聞かせてみる。
でも……心が折れそう。

あなた、わたしの心を支えてもらえる?
…… ……
……ありがとう。
それじゃあ、わたしのためと思って、少しの間、聞いててね。

昨日の電車内での出来事は、あなたも知っているでしょう。

わたしも驚いたわ。
だって、有里と千里さんが突然、目の前に現れたんだから……
しかも、事態は切羽詰まった感じで……

わたしは、咄嗟の機転で、携帯を鳴らしてふたりを救い出そうとした。
そうして、気が付いたときには、3人一緒にホームに立っていたの。

怖くて恐ろしくて、肩がブルブル震えたけど、神様はそのお礼に、素晴らしいプレゼントを送ってくれたわ。
わたしと有里は、駅の1階にあるカフェで、千里さんにケーキをごちそうになったの。

えっ、そのことがって……?

……うん、それもあるけど……

わたしが嬉しかったのは、有里と一緒にケーキを食べたこと……
彼女とは一言も話せなかったけど、夢のような時間だった。
おかげで途中、何度も涙が出そうになったけどね。

そして、もうひとつ、千里さんに出会えたこと……
世の中に、こんな素晴らしい女性がいるなんて思わなかった。
だって、こんな幸せな機会を提供してくれたんだから……

でも、不思議……
彼女には、あのとき初めて会ったのに、なぜか他人のような気がしなくて……
わたし、千里さんのことを、実のお姉さんにように思うようになっていたから……

それでかな……
千里さんに、有里と早く仲直りすることを諭されたような気がしたの。
そう、千里さんの目が、そう訴えていた。
それに耐えうるだけの勇気も、わたしはもらった。

ありがとう、千里お姉さん。
あなたに会えたおかげで、わたしは、一歩踏み出せそうだから……

……うん? まだ、隠していることがあるって……?
あなたは、全てお見通しって感じね。

これは、有里には内緒にしてね。

実はね。昨日、千里お姉さんや有里に会ったのは偶然じゃなかったの。
わたしは、有里に気付かれないように、後をつけていた。
理由は……あなたも知っているてしょう。

あの時もそうだった。
だからわたしは、有里の姿を追いながら、隣の車両から彼女を見つめていたの。
そうしたら……あとはあなたも知っているとおりよ。

ただ、ちょっと気になることがあって……

ふたりが飛び込んで来る前から、わたしの向かい側で、ビデオカメラを使って何かを撮影している人がいたの。
物凄く体の大きな人だった。
顔はよくわからなかったわ。
サングラスを掛けていたからね。

それとあの3人組……
電車の中から、笑ってこっちを見ていた気がするの。
まあ、気のせいかもしれないけど……

……どうしたの? まだ、隠してるって?

ふーぅ。あなたには、かなわないな。
全部、話してあげるわ。

わたしね、心の中では、贖罪するんだって思っていたけど、何ひとつそれらしいことが出来ない自分に苛立っていたの。
具体的に有里と家族の人たちに何をすべきなのか?
それさえ見付けられずに生きている自分に、憎悪さえ抱いた。

ふふふ……身勝手でしょ。
あなたも、そう思うでしょ。

そんなわたしに、千里さんはきっかけを教えてくれた。

だからわたしは、一晩考えた末に、有里のお父さんのお見舞いに行くことにしたの。
もちろん、このことは家族には内緒。
これは、わたしの問題だから……

ね、これでわたしが、ここにいる理由がわかったでしょう。



エレベーターの扉がひらくと、6階のフロアーに降り立っていた。

廊下の壁に贖罪すべき名札を見付けて、心がまた折れそうになる。

「失礼します……」

控えめな声のわたしを、病院独特の消毒液の匂いが出迎えてくれた。

ドクッドクッって、また心臓が高鳴り始めてる。
知らず知らずのうちに、呼吸もしずらくなっている。

わたしは、気持ちを落ち着かせようと、室内を見渡した。
西日を避けるためか、ブラインドの下がった部屋は、昼間だというのに薄暗い。
そして、一目で見渡せる病室には、わたしと、静かに寝息を立てている有里のお父さんだけ……

あっ、そうだ。

花束を握り締めたままのことを思い出したわたしは、花瓶を探そうと、おじさんに背を向けた。

舞衣、何をやっているのよッ!
もう一人の自分が、急かしている。

わたしは、自分の犯した罪から、本能的に逃げようとしていた。

とりあえず、花束を棚の上に置いたわたしは、重くなった身体を引きずるように医療ベッドの脇に立った。

「…… ……
……おじさん、わかりますか?
わたしです。吉川舞衣です。
有里さんの友だちだった吉川舞衣です。
気を悪くされるかもしれませんが、わたし……おじさんに会いにきました。
ですから、しばらくの間、ここにいさせてくださいね。

ところで、お身体の具合はどうですか……?
……よく……ないですよね。
これ、言い訳になるかもしれないけれど、わたし……おじさんがこんなに苦しんでいるなんて知りませんでした。
謝って済むことじゃないですよね。
本当にごめんなさい。

父がおじさんにした仕打ちは、わたしが心からお詫びします。
有里さんが、わたしを憎む気持ちもよくわかります。
でも、今でもあの人は、なんの反省もなく生きています。
それが、当然とばかりに……
わたしは、もう、あの人を父とは思っていません。
あの人は、人間の顔をした鬼。
そして、わたしは、鬼の娘。
だから、父の罪をわたしなりに償いたいんです。
これから、わたしの一生をおじさんと家族に捧げるつもりです。
そして、有里さんはどんなことがあっても、守ってみせます。

あの、怒らないで聞いてくださいね。
昔、おじさんの家にお邪魔するたびに、わたしに言いましたよね。
『有里をこれからも、よろしく頼む』って……
あの時は、よくわからずに返事をしていたけれど……
お願いします、おじさん。
もう一度、このわたしに仰っていただけますか。
『有里をこれからも、よろしく頼む』って……
…… ……
あ、無理しなくていいですよ。
わたしは、おじさんに会えただけで、充分にこれからの勇気をいただきましたから……

ちょっと話しすぎましたよね。
ごめんなさい
あの、これからも顔を見せて構いませんか……
勝手と思われるかも知れませんが、わたしのわがままだと思って下さって結構ですから。
それでは、またお話をさせてください。
今日はごめんなさい」

話し終えたわたしを、嗚咽が待っていた。
でも、よかった。
病室に誰もいなくて……

わたしは、眠っているおじさんの顔を覗き込んでから、履いている靴を脱いだ。
そして、両手両ひざを床につけて、目をつぶり頭を下げた。

許してください、おじさん。

わたしは、何度も何度もささやくようにつぶやいた。
ポタっポタって水滴が床に落ちる音が聞こえる。
謝罪で涙なんてずるいけど、今だけは許してね、おじさん。



どれくらい、そうしていたのかな。

カチャッっていう扉のひらく音と、「早野さん……」でピタっと止まった女性の声に、わたしの謝罪のささやきが中断した。

「ま、舞衣さん、なにをしているのよっ?!」

驚いた様子でわたしに近寄った女性は、ナース姿の千里さんだった。

顔を上げたわたしを見て、更に驚いた顔をしている。
でも、わたしも驚いていた。
まさか、千里さんが、おじさんの看護をしていたなんて……

「なにも言わなくていいから……」

そう言うと、千里さんは自分のハンカチで、わたしの顔を拭いてくれた。
そして、窓際に丸椅子を置くと、わたしを座らせた。

「ごめんなさい。驚かせて……
わたし、有里のお父さんに、どうしても会わなければいけないと思って、ここに来たんです」

「はーぁ、やっぱり……
あなたと有里さんの間には何かあるのね。
昨日、会ったときもお互いぎこちなかったから……」

やっぱり、千里さんは、気が付いていたんだ。
わたしと、有里のこと……

「もう、しょうがないわね……
ひと肌脱いであげるわ。
私のこと、お姉さんだと思って、全部話しなさい。
話の内容によっては、いい答えが見つかるかもしれないからね」

「……わたし……わたし……」

千里さんが、せっかく顔をきれいにしてくれたのに、また、涙が溢れてくる。
わたしは声を詰まらせながら、今までの経緯、今のわたしの気持ち、その全てを話した。

千里さんは時折うなづきながら、じっとわたしの目を見つめて、話に耳を傾けてくれた。

「……よく話してくれたわね。
辛かったでしょう、舞衣さん。
あなたの気持ち、私にもよーくわかるわ。
私も……ううん、今は舞衣さんの今後のことだよね」

しばらくの間、千里さんは、窓の外を眺めるようにして、じっと黙っていた。
そして、考えがまとまったのか、わたしに微笑みかけるようにして、口をひらいた。

「……確かに、あなたが罪の意識に悩みながらここまで生きてきたことには、私も同情するわ。
でもね……
もっと割り切ったほうが、楽じゃないかしら」

「……割り切る?」

「そう。罪の意識を片隅に残しておいて、普通の18才の女の子らしく、あなたの有里さんに対する思いをぶつけてみるの。
すぐには、できないと思うけど、ゆっくりとそういう努力を続けていけば、有里さんもきっと心をひらいてくれると思うから……」

「わたしにできるかな?」

「大丈夫。舞衣さんなら、きっと……」

わたしは、千里さんにお礼を言おうとして立ち上がった。
その時……?!

カチャッ……!!

病室の扉がまたひらいて、今度は元気な女の子の声が響いた。

「お父さん、お見舞いに……?!
ぇぇええッ……どうして……どうしてここに、あなたがいるのよッ!」

入ってきたのは、有里と有里のお母さんだった。

「あなたッ、どういうつもりよォッ!
今すぐ、ここを出て行きなさいよッ!
早く出て行ってよォッ!」

有里は、窓際のわたしたちの元へ駆けよると、今にも掴み掛りそうな勢いで、わたしを睨みつけている。

「有里、落ち着きなさい……」

「お母さんは、黙っててッ!」

ヒステリックに叫ぶ声に、室内がシンとする。
わたしは、彼女の後ろで声を失い立ちつくすおばさんに、目で軽く挨拶すると、震える声で話しかけた。

「ごめんなさい。わたしが悪かったわ。
有里。あなたの気に触ることをして、本当にごめんなさい。
ただ、わたし……
有里のお父さんのお見舞いを、どうしてもしなくちゃいけないと思って、ここに来たの。
だから、許して。
お願い有里……」

「有里、有里って……ッ!
何度もわたしの名前を呼び捨てにしないでよッ!
友だちでもないあなたに、呼ばれたくないのよ。
さっ、出て行ってくれる……」

わたしは、有里に何度も頭を下げて、部屋を出て行こうとした。

「待ちなさいよォッ!」

振り返ると、棚においたままになっていた花束を、有里が指さしている。

「このゴミも一緒に、持って帰ってくれる」

「有里……」

千里さんの言葉に少し希望が見えかかったけど、やっぱり幻想だったみたい。
そうよね。これが現実よね。
わたしは、有里の言うゴミを取ろうと手を伸ばした。

「ストォップッ……!」

窓際から、誰かの声がした。

「ここは、病室なのよ。
あなたたち、そのことわかっているの?
ここで、大きな声を出すことは、ナースである私が許さないから……」

「でも、千里さん。
舞衣がここに来るから、こんなことに……」

「有里ッ、黙りなさいッ!
……ちょっと、ふたりに話があるから付いてきなさい。
さあ、有里! 舞衣!」

驚いた。千里さん、こんなにしっかりしているんだ。
わたしは、同じようにあっけに取られている有里と一緒に、千里さんの後を追いかけた。



10分後、わたしたち3人は、病院内にある喫茶室にいた。
向かい合うように、千里さんが、そして、わたしの隣に有里が座っていた。

有里は、さっきからずっと、頬を膨らませながら目を泳がせている。
彼女がこういう表情をするときは、怒りが収まりかけて、ちょっと後悔しているとき……
わたしは、長年の付き合いで、有里の表情から大抵の感情は読み取ることはできる。
別に彼女の性格が単純って訳ではないけどね。

「ちょっと、驚かせちゃったね。
でも、あそこで騒がれて患者さんに何かあったら、私の管理責任が問われるのよ。
……どうしたの? 以外そうな顔をして……」

「いえ。てっきり、わたしと有里……さんのことを気遣って言ってくれたのかと……」

「ふふっ、これが大人の言い訳ってやつ。
嫌いでしょう。こんな言い方……
じゃあね、私の本心で言ってあげる。
さっさと、こんなつまらない意地の張り合いは、おやめなさい」

「つまらないって……千里さん、ひどいよぉ……」

有里が、わたしから顔をそらしながら、拗ねたような声を出した。

「有里には悪いけれど、大まかな話は舞衣から聞いたわ。
確かに、舞衣のお父さんはひどい人かもしれない。
でも、それと舞衣さんは関係ないじゃない。
血は繋がっているけど、ただ、それだけの関係……
人にはそれぞれ、確立された個性があるの。
舞衣さんには、舞衣さんの……
お父さんには、お父さんの……
それぞれをはっきりと区別していかないと、家柄だとか、国籍だとか、ツマラナイものに囚われてしまうわよ。
今は、まだ、お互いにわだかまりがあると思うけど、ゆっくりとでいいから、解きほぐすべきだと思うわよ」

千里さんは、そう言うと、わたしと有里の両方に視線を合わせて、納得させるようにうなづいた。

「あの、千里さんは、どうして、わたしや有里さんを気にかけてくれるんですか?」

「うーん。ふたりが可愛い私の妹だから……これで、どう?」

わたしは、くすくすって笑った。
隣を見れば有里もくすくすって笑って、目があって笑うのをやめた。

「業務連絡、水上千里さん。至急、入院病棟6階のナース室まで……」

まだまだ続いて欲しかった幸せな時間に、突然の院内放送が終わりを告げた。

「あっ、さぼっているのが、見つかっちゃったかな。
私、もう行かないと……
怖ーい婦長さんが、角を出していそうだからね。
それじゃ、私の妹たち。仲良くしてよ……」

千里さんは、慌てて席を離れた。
わたしは、彼女を見送りながら、胸の中でそっとつぶやいた。

ありがとう、お姉ちゃん。



目次へ  第32話へ




少女涙の羞恥生活 30話 アップしました。

カテゴリーの 『少女涙の羞恥生活 21~30』 より、ご覧になってください

電車騒動























(三十)


八月 二十日 水曜日 午前九時  水上 千里
 


「あーぁぁぁぁ」

私は電車のつり革に掴まりながら、小さくあくびした。
あ、断っておくけど、あの声じゃないわよ。

実は昨日の朝から一睡もしていないの。
と、いうのも、この病院に勤め出してから、初めての昼勤、夜勤の連続勤務をこなしたから。
因みに、今は帰りの電車の中ってこと。

ただ、いい天気よね。
8月の陽差しって、ギラギラした太陽を思い浮かべるけど、私はこの季節が好きだな。
なんだか、心まで解放的になって……
このまま海まで行って、ちょっとエッチな水着で浜辺を散歩したい気分……

でもねー、現実は厳しいな。
今日も、夜勤シフトなの。

このまま、アパートに帰ったらパタンキューで、夕方からまたお仕事……
とても、海には行けないな。

こんな可哀そうな私が、今出来ることと言えば……
そうよねぇ、降りる駅までもう少し時間があるから、このまま昼寝じゃなくて、朝寝? することかな……
私はそう決めると、人目もはばからずうとうとし始めた。



「あんたたちッ! なにやってるのよォッ!」

なに? ……なにかあったの……?!

威勢良く啖呵を切った若い娘の声に、私は夢から連れ戻された。
そして、車両内が重苦しい雰囲気に包まれているのに、気が付いた。

もう、人がいい気持ちで睡眠してたのに……
私は、霞んだ目を細めながら、威勢のいい声の主を探した。

あそこにいる……

私が吊革にぶら下がっている所から、そうね……10メートルくらいかな。
隣の車両との連結部付近に、どう見ても違和感のある体勢の男女の姿がある。

ジーンズにTシャツ姿のラフな感じの少女が、若いサラリーマン風の男性を庇うように立っていて、相手は、男が3人。

茶髪で、首に何かのタトゥーをした背の高い男に、あとのふたりは金髪で、こちらも、腕や肩にタトゥーをして、どちらかというと、ずんぐりな体型をしている。
その上3人揃って、耳や鼻に趣味の悪いピアスをいくつもひっつけて……
結論として、こんな時間から暇を持て余していそうな、どうでもいい人たち。

「よぉ、姉ちゃん。威勢がいいなぁ。
こんな、歯ごたえのない男は、ほっておいて、俺たちと仲良くしなーい。
はははは……」

「……くッ、そんなのお断りよ。誰があなたたちなんかと……
大体、3人がかりで、たったひとりをいじめるなんて、卑怯よッ! 最低よッ!
男だったら、清々堂々と一対一で勝負しなさいよッ!」

「クククッ、言ってくれるねぇ。
今時珍しい、強気な姉ちゃんだな。
おいっ……」

リーダー格らしい真ん中の背の高い男が、なにか考えがあるのか、あとのふたりに目配せした。
この男、首筋にサソリのタトゥーをした、ちょっとまともじゃない目をしている。

……まずいわね。
こういう連中は、くだらないプライドだけは、しっかり持っているから、厄介なのよね。

事の重大さに気が付いた私は、じっと推移を見守る他の乗客を見回してみる。

一生懸命、音楽に夢中になろうとヘッドフォンを付けている人……
うつむいたまま、耳を閉ざすように震えている人……
そして、大多数が、眠くないのに寝ている人たち……

その他に……?
あれっ? 今、レンズが光ったように思ったけど気のせいよね。

そうこうしているうちに、男たちと若い娘の間がどんどん詰まっていく。
おまけに、手下らしいふたりは、威嚇するように他の乗客を睨みつけている。

ついに、背の高い男が、面白半分に少女の胸を掴んだ。

「キャアァァァッ! なにすんのよッ! このスケベッ!!」

甲高い悲鳴が車内に響いて、緊迫感がますます増していく。
少女は咄嗟に、胸の前で両手をクロスさせると、ジャンプするように半歩後ずさった。

もう、一刻の猶予もなさそうね。
私は、覚悟を決めると、男たちに向かって歩き始めた。

「あなたたち、見苦しいわよ。
こんな子供相手に、大の男が3人がかりで……
恥ずかしいと思わないの……?」

こういう時は、なるべく声のトーンを落とし気味に、そして、ゆっくりと落ち着いた口調で……?

「なんだぁ、てめぇ」

手前の部下らしい金髪の男が、私を睨みつけてくる。

ここで視線をそらしたら負けよね。
私は、いきがる3人の目を順番に睨みつけてから、窓ガラスの外に目をやった。

そして、少女の顔をチラリと見て驚いた。
あなたは……!!

少女の方も気がついたみたい。
頬を赤くしながら、驚いた顔をしている。

「なんだと言われても困るけど……
私もこの子と同じ女性なのよ。
あなたたちも、まさか女に手を出すような、恥ずかしい真似はできないでしょう?」

もう少し、あと少しで……
私は再度、窓の外の景色を確認すると、私の斜め後ろで身構えている少女に目で合図した。

「おいっ、俺たちはなぁ、男だろうが、女だろうが関係ない。
ただ、やり方が違うだけだ。やり方がな……ふふふふッ……」

そう言うと、空間でなにかを掴むように、指を動かした。

下品な人……

「そうですか……
でも、お生憎さま。
私に触れることは、あなたたちには出来ないと思いますから……」

「なんだとぉ、人をこけにしやがって……
このぉ……おぉっとッ!」

突然、車内がガタガタと揺れ、いきがっていた男たちがバランスを崩した。
電車が駅に停車するために、ポイントを超えたみたい。

「今よッ!」

私の掛け声より先に、少女が動いていた。
あっという間に、車両連結部分の扉の先に、その身体を消していく。
あの子は、走っているんじゃない、飛んでいるんだ。
そう思うくらい、一瞬の出来事だった。

もちろん、私も続いた。
そして、少女が隣の車両に向かって走り抜け、私も走り抜けた。

あとは、電車が止まると同時にホームに飛び出し、駅員を呼ぶだけ。

…… ……?

まだなの……
いつもより、停車に時間がかかっている。

早くしてくれないと……やっぱり……
ガタンッて音がして、男が3人、怖い顔でこっちに向かってくるじゃない。

やばいよ。ほんとに……ついてないなぁ。

私は無念そうな顔をした。
隣にいた少女も、無念そうな顔をしている。
そして、もうだめって覚悟したときに、これって奇跡……?!

「♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪……!!」

突然、車内に大音量の着メロが、響いてきた。

全ての視線が、音量の発信地であるひとりの少女に集中している。
当然、ならず者3人組も……

プシューッ!

手間取っていた電車がやっと停車し、扉がガタッという音を残してひらいていく。

助かったかも……?

私と少女はホームに飛び出した。
続いて、音量の主の少女も飛び出して来る。

「駅員さーんッ!」

私たち3人は、ホームの上で大げさに手を振った。
結局男たちが、降りては来ることは、なかったけど……



「おかげで助かりました。ありがとうございます」

少女、ううん、早野有里さんは、私の前で大げさに頭を下げた。
そして、もうひとりの少女に目をそらしながら、ぼそっと小さな声で、ありがとうって言うのが聞こえた。

うーん。このお嬢さんたち、知り合いなのかな?

私は、少し勘ぐってからふたりを誘った。

「ケーキでも食べにいかない?
私が、ごちそうするわよ」

「ケーキ……?」

「喜んで……」

前者が、目を輝かせた有里さん。
後者が、控えめに応じた、舞衣さんっていう少女。

私たち3人は、駅の1階に入っているカフェで、しばらくの間、他愛もない話に夢中になっていた。

私は、前に勤めていた産婦人科での体験談を、多少オーバーに話して聞かせた。
女性が妊娠して、出産するまでの過程を詳しく話していたら……やっぱり、ふたりとも女の子よね。
目を輝かせて、大きくうなづきながら聞いているんだから。

本当は、一昨日の気になることを、有里さんから直に聞きたかったんだけど……
舞衣さんも同席していたしねぇ。

それになぜだか分からないけど、今はこの話題を口にするなと、私の心がブレーキを掛けてくるの。
私って、まさか霊感が強いタイプかも……

だから逆に、私はふたりに通っている大学について聞いてみた。
ふたりとも、教育科に通っていて、将来は小学校の先生を目指しているらしいの。

夢が有るって、素晴らしいよね。
それに、いいよねぇ。大学生って……
なんか、自由を謳歌しているみたいで……
私も行きたかったな、大学……

ただ、ちょっと気になることがあったわ。
このふたり、私とはそれぞれしゃべるんだけど、ふたりの間になにかあるのか……
ほとんどお互いからは話そうとはしないの。

まあ、人にはそれぞれ、悩みがあるもんだし、私にも、人には言えない辛い悩みがあるから……

私は、もう一度ふたりを見比べてみた。
ちょっと勝気で、幼く見える有里さんと、優雅なたたずまいを見せて、ちょっと大人の雰囲気が漂う舞衣さん。
このふたり、今はギクシャクしているけど、きっと仲直りすると思う。

「ごちそうさまでした」

「千里さん、ケーキおいしかったです」

「私も楽しかったわ。また3人で、時間があれば会いましょうね。
なんだか、ふたりを見ていると可愛い妹たちに見えてきた」

「わたしも、千里さんがお姉さんだったら、いいなって……」

「わたしは、なんだか、照れくさいな。
ところで、千里お姉さん。
わたしって……まだ、子供ですかぁ」

有里さんが、少し口をとがらせている。

多分、電車内での私の言葉を思い出しているんだと思う。
だとしたらこの子……見た目以上の記憶力というか、あの状況で度胸があるというか……

「まあ、私から見ればふたりとも、まだまだ子供ね」

「そんなぁ……」

「えっ、わたしもですか……」

「そういえば、あの若いサラリーマン風の人って、誰なの……?」

「わたしも、知らないんです。
突然、わたしの目の前で、あの人が男たちに因縁をつけられていて、それで助けに入っただけで……」

「そ、そうなの……?
でも、女の子なんだから、あまり無茶はしない方がいいわよ」

私は、少し気になっていた。
あのとき、男たち以外に刺すような視線があったことに……
気のせいであれば、いいんだけど……

「あっ、いけない。もう、こんな時間……
講義に遅刻するぅ。
舞衣……ううん、千里お姉さん、また、誘ってくださいね」

有里さんは一瞬、舞衣さんの名前を呼び掛けて、慌てて訂正した。
もう、あの子も意地っ張りなんだから。

「わたしも、失礼します。
今日は、ありがとうございました」

舞衣さんは、丁寧にお辞儀すると、有里さんの後を少し距離をあけながら、追い掛けていった。

なにがあるのか分からないけど、仲直りしてよ、おふたりさん。

さあ、私も早く帰って寝ようっと……



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少女涙の羞恥生活 29話 アップしました。

カテゴリーの 『少女涙の羞恥生活 21~30』 より、ご覧になってください

ライバルの協定























(二十九)


八月 十八日 月曜日 午後九時三十分  早野 有里
  


「こ、これで、いいんでしょ。
わたしとのセックスは、満足できました?」

わたしは立ちあがると、下着を身に着け始めていた副島に、背中から声を掛けた。
瞬間、染みの浮いたスカートが、汚れた下半身を隠した。

なぜか、いらだっていた。
だから、あえて挑発的に言ってみた。

「満足ぅ? 大人をからかうのはよしてくれませんかぁ。
今日のあなたは、ただ、お尻を突き出して、よがっていただけじゃないですか」

副島はズボンを履き終えると、見下すように、クククッと笑った。

「そんな……ひどい……
わたしは、あなたの指示に従って、あんな屈辱的なことをしたのに……
これ以上、どうしろというのよッ……?」
答えがあるなら、さっさと教えなさいよッ……!」

「まあ、落ち着きなさい。
どんな手練れの娼婦でも、最初から客を満足なんかさせられません。
特に、あなたのような初心な人は、相当仕込まないと使い物にはならないですからねぇ」

「……わたし、別に娼婦になるつもりなんか……
そんな、これ以上怖いこと……して欲しくないし……」

しゃべりながら、わたしの目は泳いでいた。
娼婦という淫らな単語と、壁に取り付けられた皮枷が、いけないことを想像してしまう。

「まあ、有里様がどう思おうと勝手ですが、私は、どんどんあなたを仕込んでいくつもりですよぉ。
みっちり鍛え上げて、高級娼婦として暮らせるくらい、セックス大好きの変態にしてあげますから、お楽しみに……」

「わ、わたしは、そんな……せ、セックスが好きな、変態さんになんかならないからッ!
わたしは、あなたの指示には従っても、絶対に心までは折れないからッ!
そのつもりでェッ……!!」

「どうぞご自由に。
私も、心の芯が強い人の方が好きですからねぇ。
……ああ、そうだ。
言い忘れていました。
今日のあなたの行為には、満点をつけておきますからご安心を……
では、私はこれで……」

副島は、身支度を整えると、さっさと部屋を後にした。

「なによ、散々わたしを馬鹿にしておいて……行為だけは満点だなんて……
やっぱり……わたしが子供だからかな……?」

ツ―ッと、お尻に付着した白濁液が、太ももの裏側を垂れていく。

「あーあ……
こんな、服を着たまましたりするから、スカートもシャツも汚れちゃった」

そうだ、シャワーを浴びよう。
熱いお湯を浴びて、汚れた心も身体もリセットするんだ。
……その場合、火照った肌には、熱めのお湯かな? 
それとも、ぬるめの方かな?
……どっちだろう?

わたしは、けだるい身体を引きずりながら、怖い部屋を出ると、応接室につながるバスルームへ向かった。

副島はなにも言わなかったけど、この前みたいに、誰か迎えに来るのかな?
だとしたら、さっさとシャワーを浴びよう。

それまで、きみはこの部屋の見張りをお願いね。
…… ……
……なに?
そんな不満そうな顔をしないの。
だって、きみ……
わたしが責められるのを、ずっと覗いていたでしょう。
本当にスケベなんだから……

わたしは、バスルームに入って、身に着けているものをぜーんぶ脱ぎ去った。
そして、大変なことに気が付いた。

……ない!……ないッ?!
わたしの……パンツがないッ?!
副島に持っていかれたぁぁッ!!
…… ……?
…… ……??
…… ……?!!
と……いうことは……帰るときは……!!

ノーパンってことぉっ!!

「そんなの……いやぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!」



            八月 二十日 水曜日 午前一時   副島 徹也


「お呼びですか、副島先生」

応接室の扉がひらき、松山が入ってくる。
時刻は午前1時、私にとっては、快適な時間だ。

「何か、お飲みになりますか?」

私は立ち上がると、キャビネットをひらいた。
中には、それなりの食器と酒が準備されている。
急な来客にも、対応するためだ。

「いえ、私は結構です。
今晩は、夜勤なもので……」

松山は手で制すると、勧められる前にソファーに腰掛けた。
私も仕方なくキャビネットを閉じると、彼に対面するように座った。

「それにしても、落ち着きますねぇ、この部屋は……
ちょっと狭いかなという気はしますが、なかなかどうして、いいものですね」

「そう褒めていただくと、なんだかこそばゆい感じがしますが……
それと、先生という呼び方はやめてもらえませんか。
私は医師免許を持っていませんので……」

「いやぁ、これは失礼。
ただ、私よりも格上である取り締まり役を務めているものですから、つい……
それでは、副島さん。
今日は何の用件でしょうか?」

松山は嫌みな口調でそう言うと、私の背後にある扉に視線を泳がせた。
やはり、扉の向こうが気になると見える。

「ええ、そのことなんですが……
現在、私が担当しているのは、先生も御存じの早野有里ひとりなのですが、近々もうひとり追加する予定なんですよ」

「それはそれは、羨ましい話です」

「そこで、松山先生に相談なんですが、この応接室とこの奥にある調教部屋を、共有してはどうかと考えているんですよ……」

「ほう、この奥はそのような部屋になっていたのですか……
それで、なぜ副島さんの方から、このような話を持ちかけるのです。
あなたの作業がしずらいのではないですか?」

松山の視線は露骨に、私の背後を漂っていた。

「いえ、そのようなお気づかいは無用に願います。
聞くところによると、先生もひとり担当する予定が入っているとか……
それでは、先生の方こそ、ここを利用されないと、作業がしずらいでしょう」

「それは、まあ、そうですが……
ここまでいい条件だと、ちょっと見返りが気になりますね。
ずばり、なんですか? 副島さん」

「いやあ、ここまで話が早いと助かります。
私の要求は、担当する女の部分的な共有化をして欲しいんですよ」

「部分的共有……?」

「ええ、それぞれの女をたまには交換して、あるいは3人まとめての行為をやらせようと、思っているんです。
そうすれば、互いの行為に幅を持たせることが出来るし、女同士の心と身体の触れ合いも楽しめると思いますよ」

松山の目が輝いている。
こういうところは、同じ性癖を持つもの同士。
ほぼ、これで決定だろう。

「ええ、面白そうですね。
ある程度、目途がついたらぜひ、こちらからお願いします」

「それは、よかった。
合意出来てなによりです。
お祝いに、乾杯でも……おっと、これは失礼……ははは……」

私は乾いた笑いを投げ掛けながら、今後の予定を考えていた。
ここの秘密基地の使用頻度は、多少低下するが、行為のバリエーションが増えるのは捨て難い。
それに、松山とある程度接近しておくのも、損はないだろう。

その後、私は松山に自慢の調教部屋を公開し、男の喜ぶ顔に悦を感じていた。

ただ、ひとつ気になることがある。
松山が、当分の間、横沢良一を貸して欲しいと言ってきたのだ。

どうやら、担当する予定の女の弱みが、横沢らしいということは分かる。
だが、私も彼の行動は、出来る限り把握しているつもりだ。
色々と考えたあげく、ひとりの女が浮上する。
……と、いうことは……?!
松山が担当する女とは、彼女のことか……
灯台元暗しとは、まさにこのこと……
これは、私にとっても面白いことになりそうな気がしてきた。



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後背位でセックスしてください























(二十八)


八月 十八日 月曜日 午後八時五十分  早野 有里
  


わたしは、例の応接室で、宿題を副島に手渡した。

ビデオカメラに大学ノート……
この中には、わたしの……

「さすがは有里様と言いたいところですが、ノートは良しとして、ビデオカメラは丸ごとですかぁ?
まあ、カードにおとすとしましょうか」

「仕方ないでしょ。
……やり方がわからないんだから」

「はいはい。おー、これは……」

耳を澄ませば、甘い吐息が……
副島が、わたしのオナ、ううん、再生している。

「ちょっとぉッ! ここで見ないでよ。早く止めて……ッ!」

「いやー、良く撮れていますよぉ。
……有里様の自我撮りオナニー」

今日も散々、この男に鳴かされそうな気がしてきた。


「それでは、今日の行為を説明するので、こちらの部屋に来てもらえますかぁ?」

副島は、応接室の奥にあるドアを開けると、手招きした。

「……何なのよ、この部屋ッ!」

わたしの声は、情けないくらいに裏返っていた。

そこは、壁にクロスも貼っていない、コンクリートがむき出しの殺風景な部屋……
これだけなら、そこまで驚かないわよ。
問題は、簡易ベッドの四方に取り付けられている手錠みたいなやつ。
皮みたいな物で出来ていて、多分、両手両足をあれで拘束するんだ。
それと同じ物が、壁にも……?!

わたしは、回れ右をしようとして、肩を掴まれた。
あのぉー、ストレートに怖いんですけど……

「ここはあなたのようなお嬢様に、思う存分、性の快楽に浸ってもらおうと、私が造らせた特殊な部屋なんですよぉ。
おそらく、あらゆるジャンルのAVが撮影できるくらいの設備は整えたつもりです。
……その代わり、高くつきましたよぉ。
ここのリフォームだけで、3千万はしましたからねぇ。
……ククククッ……」

「あ、あ、あの。ここで、な、何を……?!」

怖すぎて言葉にすることを忘れた。

この人……わたしのために3千万もかけて……造ったのがこの部屋……?
それだけあったら、他の使い道がいくらでもあったでしょ。
無駄使いしては駄目って……お母さんに言われなかったの……?

それに、あらゆるジャンルって……一体なにをする気よ。
まさか、わたし拷問されるとか……? 
それとも、やっぱりSМ……? 
それとも……
……もう二度と、お日様が見られないかも知れない。

「有里様。さっきから何をブツブツ仰っているのです?
感動していても構いませんが、さっさと今日の行為を始めますよぉ」

わたしは、目の焦点が合わないまま、うなづいた。

きみ。もし、わたしに何かあったら、仇はきっと討ってよ。



「それでは、有里様。そこの手摺を両手で掴んでくれませんか?」

副島は、壁に沿うように取り付けてある銀色の支柱を指差した。
高さは、わたしの腰くらい……
よく、バレエのレッスンで手摺を使って脚を上げたりするのがあるけど、その感じかな。

わたしは、言われた通り、両手で支柱を掴んだ。
そして、副島によって前屈姿勢を取らされた。
両腕を一杯に伸ばして、背中も真っ直ぐに……
いやでも、お尻だけが突き出される形に……
おまけに、わたしの正面には、大きな姿見の鏡まで……

わたしにも、わかったよ。
今から、どんな体勢で犯されるのか……
これって、バックって言うんでしょ。
……この前のイラストに載っていたからね。

「ちゃんと指示に従ってスカートを履いて来たんですねぇ。
……感心、感心……
ところで、私がプレゼントしたパンティーは、もちろん身に着けていますよねぇ」

副島は、背後に立つと、スカート越しにお尻を撫で始めた。

ざわっ、ざわっ……ざわっ、ざわっ……

綿生地が肌と触れ合い、虫が背中を走るような嫌な感覚……
わたしは、手摺を握り直した。

「そのまま両足をひらいて……後は動かない」

言われた通り足をひらいた。

この姿勢、結構きついから……早くして終わらせて欲しい。
……どうせ、処女じゃないんだ。
頭の中で言い訳を繰り返した。

「有里様。男が女の子にする悪戯で、一番憧れるものが何か、知っていますかぁ?」

副島が背後から呼び掛けてくる。

わたしは、「分かりません」と答えた。
でも今の状態で、男がする悪戯といえば、こんなのたいして考えなくてもわかる。
……でも、答えたくなかった。
だから、知らんぷりして、床を見つめた。

「それはですねぇ……ククククッ……」

副島は、スカートの裾を掴むと、一気にめくり上げた。

……ファサッ!

むき出しになった太ももに、冷たい空気が触れてゾクゾクとする。
きっと汗をかいていたから……
ここまで、走ってきたから……
……ということは、わたしの汗の匂いもこの人嗅いでいるのかな?
……恥ずかしいな。

「…… ……?!
なんですかぁ、このいやらしいパンティーは……
お尻が丸見えですよぉ。
……可愛い顔をして、Tバックのパンティーとは……いやはや、男を誘うツボを心得ていらっしゃる。
はははは……」

「……みないでよ……おねがい……」

わたしは、小さな声で下をうつむいたまま、お願いした。

わざと、心を空っぽにしてパンツのこと忘れていたのに……
自分の部屋で、このパンツ穿いて泣きそうになったのに……
でも、命令だから従ったのに……

それなのに、こんな言われ方、ひどすぎる。
今日1日、もしスカートがめくれたらと思うと……
恥ずかしくて怖くて……
それでも、がんばったんだよ。
自分を一生懸命励まして……

「……それに、肝心な処はスケスケのレースですかぁ。
エッチが大好きな有里様のおま○こも、これなら蒸れることなく快適でしょうねぇ」

…… ……?!
……どうして、それが分かるのよ?
えぇっ?! 声が……下から響いている……?!

……ということは……?
……ダメ。
……スカートの裾が垂れ下がって、よく見えない。
……でも……でも……?!
よぉーく見ると……!!

視界の端に、不気味ににやつく副島の顔……ッ!
わたしのひらいた両足の間に、副島が頭を突っ込んでいる。

「……?!……イヤァァァーッッ、頭を抜いてェェッ……!」

「……すぅーっ、すぅーっ。
有里様のおま○こから沸き立つ体臭も、汗の匂いも、なかなか趣がありますねぇ」

あそこを覗いて……
鼻の穴を一杯にひらいて……
わたしのあそこの匂いまで嗅いでる。
こんなことなら、せめてシャワーを浴びさせてよ。

「やるなら、早くして下さいッ!
女の子のパンツを見ているだけでは、物足りないでしょ」

わたしは、挑発するように言って、お尻を小さく揺らした。
はしたないって言われたって構わない。
こうなったら、早くこの惨めな姿勢から解放して欲しい。

「有里様も、この1週間で随分と淫乱になられて……
そこまで仰るのなら、ひとつ、あなたが私を導いてくれませんかぁ?
前にある鏡を見ながら、私にセックス指導をお願いしますよぉ。
当然、男を興奮させるようにいやらしい言葉使いでねぇ……ククククッ……」

「……なッ?!」

返事も反論もできなかった。
ただ、今夜やらされる行為の内容だけは、はっきりしてしまった。

どうしてこう……わたしのすることって、ぜーんぶ裏目に出るんだろう。

わたしは、目の前にある鏡を見つめた。
とまどいと羞恥に顔を染めた少女が、両手で手摺を握り締めて、助けを求めるように見つめている。
そして、その背後には、つまらない人の姿も……

でもね、わたしには、このつまらない人の協力が必要なの。
そのためなら……このぐらいなら……今のわたしなら……出来そうな気がする。

ごめんね、鏡の中のわたし……
今から、死ぬほど恥ずかしいことをしなければならないの。
だから……一緒にがんばろ。

わたしは、鏡の男性に話しかけた。

「あのぅ、副島様。わたし、いえ、有里とセックスを楽しみませんか……
きっと、気持ちいいですよぉ。
……でも、有里はこの通り両手が使えないのぉ。
……だから、お願い。
……バックで、後ろから有里のいけない……お、おま○こをつついて欲しいのぉ」

これで、いいのかな……
本当は、恥ずかしくて惨めで……でも……

あっ、鏡の副島がうなづくのが見える。
……良かった……みたい。

早く、次の言葉を考えないと……
いやらしく、男を誘いながら……

「それじゃぁ、有里に副島様のたくましい、アレ……ううん、お、お、おち、おち○○んを見せてよぉ。
さあ、ズボンと下着を早く脱いで……ううん、は・や・く……」

わたしは、誘うようにお尻を振った。
鏡の副島が、ベルトに手を掛ける。

ゴソ、ゴソ……ゴソ、ゴソ……

…… ……?
…… ……?!

……ちょっと待ってよ?
副島のアレ、自称自慢の息子……全然元気がない?!
この前なんか、期待もしていないのに、真っ直ぐ上を向いていたじゃない。
せっかく、あれの固有名詞を言ってあげたのに……何が不満なのよ……?

「あの……それじゃあ、無理ですよね。
……どうすれば……?」

副島は両手の手のひらを見せて、私にはわかりませんのポーズ……

…… ……?
…… ……??

男のアレを大きくするには……??? 
……もっと、もっとエッチな言葉……?!

やっぱり、わたしの身体でアピールするしかないよね。

「副島様に有里からのお願い、聞いてもらえる?
有里のエッチなパンティーを、脱がせて欲しいのぉ。
そして、有里のお、おま○こをじっくりと見てぇ……!
それで、いやらしいお汁がたっぷり溢れるくらい、おま○こをいじってぇ……
有里が甘い声で鳴けるくらいおま○こを刺激してぇ……」

恥ずかしいけど……とても恥ずかしいけど……今は思いつくだけ淫らに話してみた。

でも、わたしの頭の、どこにこんなエッチな言葉が詰まっているの。
わたしって、こっそりエッチな本、読んでいたとか……
そんなわけ……ないでしょ。

あっ、副島が無言でわたしのパンツを下ろしてる。
お尻をツルっと丸出しにされて、太ももを通って、足首まで下りてきた。
あとは左、右と、足を少し上げて抜いてもらう。

ちょっとぉ、パンツは返してよ!
これがないと……わたし替えのパンツ持って来ていないんだからね。
もちろん、これは胸の中で……

「さあ、有里のおま○こをじっくりと見てぇ。
いやらしい匂いも嗅いでぇ……
そして、お汁が溢れるくらい……いじってぇ……」

もう1回、お尻を振ってみる。
鏡の少女の身体も揺れている。

副島があそこに顔をうずめた。
鼻息がデリケートな皮膚を撫でまわしてる!?

頼んでおいてなんだけど、やっぱり恥ずかしいよ。
見られるのも、匂いを嗅がれるのも、死にたいくらい恥ずかしいよ。
でも、わたしのくちびるは次々とエッチな言葉を作り出していく。

「副島様、なにをしてるのぉ。
有里のおま○この扉をひらいてぇ、割れ目に沿って指を使ってぇ」

一瞬、身体がブルっと震えた。
指が、大陰唇を左右にひらいて、なかの壁をこすり始めた。

「あぁぁんっ……うぅっ……もっとぉいじってぇっ……」

わたしのあそこ、期待してたみたいに敏感になっている。
ヒダをこすられただけで、ピリピリと電流がはしってる。
あっ、今度は膣の入り口に軽く指を差し込まれた!

「あぁっ、あぁっ、クリトリスも触ってぇ、有里の感じるクリトリスも……はうぅぅっ……お願い」

ぬちゃ、ぬちゃっ、ぬちゃ、ぬちゃっ……

あそこから、いやらしい音が聞こえる。
良かった、濡れてきたみたい。
ここまで恥ずかしいことをして、濡れなかったら、わたし不感症みたいに思われるからね。

「んうぅぅんんッ……クリトリス、はうんんっ……気持ちいいぃぃッ……」

副島の指が、クリトリスを押して、パチンと弾いた。
身体中をエッチな電気が駆け抜けて、背中がしなった。
ついでに、あごも仰け反った。

「くぅぅっあっ……ダメぇぇっ……そんなに強くぅぅっ……はうぅぅっ」

片方の手がクリトリスを撫でつけて、もう片方の手がヒダをこすってる。
これだけでわたし……軽くイッてしまいそう。

「あぁぁッ……気持ちいい……わたし、ダメぇ……ふうぅぅんんんん……」

頭の中が真っ白になっていく。
副島への指示なんて、もう考えられないよ。

ヒザが震えて、お尻の位置がガクッと下がって……
そのたびに、指がわたしの膣中に沈んでいく!

にちゅっ、にちゅっ、にちゅっ、にちゅっ……

「んんっ、ンうぅぅぅぅっ……すごく、いいッ!……はうぅぅぅッ!」

このままじゃ、セックスする前に大きくイッちゃう。

だめ、だめ、だめ、だめ……そんなのだめぇッ!
でも、でも、でも、でも……気持ちいいのぉ……

わたしは、波のように襲う快感をなんとか堪えながら、鏡に映る副島のアレを探した。

……!? 大きくなってる。

副島のアレが、自慢の息子に進化してる。

これで、セックスができる……??

ということは……やっぱりするんだよね。
この前みたいに痛くないかな……
ううん、それ以上に、メチャクチャ恥ずかしくて、情けなくて……
だから、もう一度覚悟を決めないと……

「そ、副島様ぁ。
有里の……はあぁぁんっ……お、おま○こも、うぅぅっ、充分に潤ったので、あ、あなた様のたくましい……くうぅぅッ……お、おち○○んを、有里のお、おま○こに嵌めて下さい……はあぁぁぁぁッ!」

副島の身体がわたしから離れた。
堅く反り返ったアレに手を添えてる?

「は、早くぅ、有里のおま○こに、おち○○んを挿れてぇぇぇ」

わたしは、重心を低くして、お尻をいっぱいまで突き出した。

にゅぷぅぅッ……!!

いやらしい水音と一緒に、堅く反り返ったアレが、あそこに突き刺さっていく。

「ううんんんんッ……くっぅぅぅっ……んんんんッ……」

膣が押し広げられて……
なかの壁を刺激して……
有里のお腹に入ってくる?!

でも、覚悟していたような痛みはなかった。
代わりに、ムズがゆくて切ないものが背筋を貫いてた。

これって、わたしが処女じゃないから……?
それとも淫乱な女になり始めたから……?

「うあぁぁっ……あぅっっっ……くぅぅぅぅぅぅッ!」

わたしのあそこに、根元まで入っちゃった。
奥まで……入ってる……!

「そ、副島様、ゆ、有里の……はぅんっ、おま○こを突いてぇッ……お願い……んぁぁぁぁ」

じゅちゅっ……じゅぶっ……じゅぶ……じゅちゅっ……じゅぶっ……じゅぶ……

「はぁぁんんッ、うれしいぃぃッ……有里……はあッ、はあぁッ……うれしいぃぃぃぃっ……」

副島のアレが、わたしのあそこを出たり入ったりしてる!
副島の腰が前後に激しく動いてる!
わたしの腰を両手で掴んで、お尻の肉に腰を打ち付けてくる!

パンッ、パンッ、パンッ、パンッ……
ファサ、ファサ、ファサ、ファサ……

肉が肉を打つ響きが、定感覚でリズムよく鳴らされて、腰の動きに合わせてスカートがはためいている。

「ああぁぁ……クッゥゥゥ……激しすぎる……フゥんんッ……」

打ち付けられて……子宮まで響かされて……
引き抜かれて……内臓まで出ていってしまいそうで……

わたし、わけがわかんないッ!!
もっと、もっと、気持ちよくされていくぅ!

「あ……ああぁぁぁっ……いいぃぃっ……イィィィィッ……」

ぐちゃっ、ぬちゃっ、ぐちゃっ、ぬちゃっ……ぐちゃっ、ぬちゃっ……

わたし、2度目のセックスでイッてしまうの……?
わたし、快感の波に呑まれて、イッてしまうの……?

これで、本当にいいの? 
わたし……なんのために、身体を提供しているの?

嫌なのに……本当は、死ぬほどイヤなのに……
身体が勝手に快楽を求めてる……?!

「んんぅぅぅっ……んうぅぅっ……はぁぁああんんんッ、いい、きもちいいぃぃぃッ……」

副島の腰のピッチが、しだいに早く強くなってる。
腰に、指が食い込んで痛いよ。
この人、もうすぐ射精するんだ……

「お、お願いぃぃ……はあぁぁっ……中にはダメぇぇッ……だめなのぉぉッ……はうぅぅんんっ……」

「……その代わり、私と一緒に……イッて下さいよぉッ!!」

副島が、腰を振りながら叫んだ。

「はいっ……うぅぅぅぅ……」

ぐちゃっ、ぬちゃっ、ぐちゃっ、ぬちゃっ、ぐちゃっ、ぬちゃっ、ぐちゃっ、ぬちゃっ……

「もうすぐ、はぅっ、もうすぐ、でますよぉっ!!」

「んむっ……んんんんっ……あそこがぁッ……激しいぃぃっ……いやぁぁぁぁぁーっ……」

副島の腰が高々と掲げられて、子宮深くまで打ち込まれてる!!
わたしの膣はキューッとなって、はしたないのに、アレを締め付けてた。

「くぅぅっ、有里様の中、きついですねぇっ……これがトドメですぅぅっ!!」

「あっああぁぁぁっ、あっあぁぁぁぁぁッ……もう、ダメぇぇぇッ、いッ、イクッぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ……!!」

背中を弓みたいに反らして……腰をピクピクいわせて……
これが、セックスでイクということ……??!!

もう、なにも感じない。
ふあふあと、心も身体も飛んでいる。

わたし……思いっきり叫んでた。
恥ずかしくなんてない。
だって、イッちゃったんだもん……仕方ないもん……

どぴゅっ……ドク……ドク……ピュッーっ……!!

お尻にも、背中にも、太ももにも、熱い熱い液が、降り注いでいる。
スカートにも、Tシャツにも、降り注いでいる。

「はあ、はぁあ……はあっ、はぁん……」

終わった、終わったのね……

わたしは、握り締めていた両手を離した。
ひざが笑って、身体が傾いた。
視線が激しく波打つように揺らされて、鏡の中のわたしも揺れていた。

でも、知っている。
本当に揺れ動いているのは、身体じゃない……心だってことに……

わたしは、鏡の少女のほっぺたを撫でた。
涙でベトベトに汚れたほっぺたを拭ってあげた。

ふふふ……、鏡の少女が笑いながら言った。

どんなに拭いても、わたしの顔は汚れたまま……無駄よ、無駄……
だって、あなた自身が汚れているんだから……ふふふふ……

銀色の支柱が、汗に汚れて輝きを曇らせていた。



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登場人物 追加しました。

水上 千里

横沢 良一

吉竹 美沙子

詳しくは、設定 登場人物をごらんください

スカートの中の秘密























(二十七)


八月 十八日 月曜日 午後六時四十分  早野 有里
   


「おじさーん。並ひとつと天ぷらぁーっ」

「はいよぉ、並と天ぷら」

「有里ちゃーん、こっちまだぁ……」

「はぁーい。ただいまぁ」

夕食時とあって狭い店の中は、人、人、人の大混雑……
座席は、テーブルもカウンターも、ほぼ満席。
おまけに、窓から店の中を覗き込みながら、入るべきか悩んでいるお客さん候補も、ちらほらと……

わたしは、狭い通路をかい潜るように移動しながら、注文取りから、配膳、会計とひとりで何役もこなしていた。
もちろん、愛嬌を振りまくことも忘れていないよ。

でも、おじさんも中々やるわね。
洪水のようなオーダーをたったひとりでこなしていくんだから……
わたしも、負けていられない。

「いらっしゃいませ。ご注文は……?」

ほら、きみも手伝ってよ。
たまには動かないと、豚さんになるよ。

誰かが、活気のある飲食店は、まるで戦場みたいだって言ってたけど……
確かに最近、お客の数が増えたよね。

きっと、美少女店員が働いている『そば屋』として、噂が広まっているのかも知れないよ。
お陰で、最近のおじさんは、いつもニコニコ顔……
お給料上げてと言ったら、OKしてくれるかな。

それにしても、今日はよく混んでいるわね。
そこの人、食べ終わったのなら、お会計、済ませてよね。
外で、次のお客さんが待っているんだから……

それなのに、さっきから何よ!
わたしの足ばかり、ジロジロ見つめちゃって……!
あっ、あっちの人も、気が付けば、こっちの人まで……

そんなに、わたしの足が珍しいの……?
それとも、スカートを履いているから……?

わたしは、さりげなくスカートの裾を押えた。
別に、ミニスカートってわけじゃない。
ちょっと、ひざ小僧が見え隠れするくらいの、青色のフレアースカート……

……どう? 可愛らしく見える?

店に入ったときに、おじさんなんか……
鳩が豆鉄砲って顔で、わたしを上から下へとジッと視線を這わせるの……
そして、一言……
「いいねぇ」だって……

わたしも半年前までは、スカートを履いて通学してたんだから、特に意識しないようにしている。

ただね……テーブルを片づけるときなんかは、ちょっと気をつけないとね。
あまり前屈みになると、わたし自慢の美脚が、太ももの奥まで覗かれそうだからね。

一応、鏡の前でチェックはしてみたよ。
パンツ見えないかなぁって……
そうしたら、ギリギリセーフ……
やっぱり、恥ずかしいからね。

特に、今日のパンツは絶対に覗かれたくなかったから……

……えっ?
それならいつも通り、ジーンズ履いてバイトすればいいって……?

うん。いろいろとあってね……
そうもいかないんだ。

「ゆーりちゃん。ビール追加ね……」

「はーい」本当に今日は忙しいわね。

「それにしても、珍しいね。
有里ちゃんがスカート履いているなんて……
まあ、おじさんは嬉しいけどね」

「ふふ、たまには若い娘のお色気でも、サービスしようかなって……
これで、お店の売上アップならいうことなしだね」

「有里ちゃんもしっかりしてるねぇ。
おじさんも、ついつい注文しちゃった。
まあ、いい目の保養もできたし、若い子のパワーももらったからね。
……今晩あたり俺もカミさんと、夜のお仕事でも……クククッ」

「おじさん! そういうの女の子の前では禁句! わかった?」

私は笑顔で怒りながら、自分の手がスカートに伸びるのを我慢していた。
ここは平常心。平常心で……

さあ、あと1時間……
……がんばろう。



……やっと、終わった。
わたしは、嵐が去った後のようなお店の中を、おじさんと一緒に片付けていた。
さすがに今日は疲れたね。
なんだかいつもの倍くらい働いた気がする。

さあ、おそうじも終わったし……
普段なら、この後「おつかれさま」で、家に帰って、お風呂に入って、遅い夕ご飯をお母さんと一緒に……
でもね、今日は……



わたしはお店を出ると、母に急いで連絡を入れた。

「お母さん。わたし……有里……
あのね、今日……」

今夜は、友達の家で勉強するから遅くなります。
ご飯は先に食べていて下さいって……

また嘘をついてごめんなさい。
お母さん。有里は今晩も悪い子になります。

さあ、もうひとつのお仕事へ行くわよ。
きみも急いで……

……ん? どうしたの……?
ちょっとぉ、きみまでスカートが気になるわけ……
えっ?! 中がですって……!
…… ……
…… ……
わかったわ。きみにだけ、見せてあげる。
今日のわたしの秘密……

……誰も見てないよね。
ちょっと、スカートを持ち上げるから、チラっとね。
あまりじっくりと見ちゃ嫌だからね。

スル……スル……スル……

さあ、見てもいいよ。
…… ……?
…… ……!
……これで、分かったでしょ。
本当は、恥ずかしかったんだよ。
……でも、仕方ないしね。

あっ! 時間に遅れそう。
……きみ、走るよ。
もし、スカートがめくれそうになったら、きみが裾を押えてね。



わたしは、指示された時刻の5分前に、なんとか病院に辿り着いた。

「ふーっ、やっと間にあった……」

お店からここまで、約2キロ。
それをほぼ全力で走ったんだから、息はゼエゼエいってるし、全身は汗まみれになるし……
これからのことを思うと、気は重いし……
よく考えたら、何もいいことがないじゃない。

「早野有里様ですね。どうぞ、こちらへ……」

受け付けで、わたしを待っていたのは、マッチョの横沢さんではなく、若い看護婦さんだった。
ショートの髪をナースキャップに包み込んで、姿勢良く颯爽と歩いている。

おまけに、スタイルのいい人……
ナース服の上からでも、出るところは出てるって感じで……

わたしと違って、胸も大きいしね。
男の人が、喜びそうなエッチな身体付きかな。
……その割に、顔立ちは清純そうな感じで、そこのアンバランスさが男性を引き付けるのよね。

……いやだ。
わたし、なにを考えているんだろう。
これじゃまるで、中年オヤジの心の中みたいじゃない。

わたしは頭を振ると、若い看護婦さんの名札を確認した。

水上千里……
…… ……?!

この人って、お母さんが話してた新しい看護婦さん……?
ということは、お父さんの世話も……

やるわね、お父さんも……
でも、気を付けないと、お母さんが嫉妬するかもよ。

それにしても、わたし……この人にどこかで会ったような……?
そうでないような……?
うーん……思い出せない。

「早野様、こちらでございます」

頭の中で夢想しているうちに、水上っていう若い看護婦さんは、わたしの前から去って行った。

目の前には、1週間前と全く同じ光景が広がっている。
わたしは、大きく溜息をついた。
今日は、なにをされるんだろう。

冷静になりたくないのに、頭が冴えてくる。
なるべく、他のことを考えてごまかしていたのに、この部屋の扉を見た瞬間、1週間前の悪夢が鮮明に蘇ってきた。

きみ、行くよ!

わたしは、奮い立たせるように両腕に力を込めると扉をひらいた。



           八月 十八日 月曜日 午後八時四十分    水上 千里


「早野有里……」

私は、彼女を応接室まで案内した後、この名前をつぶやいた。
あれから、もう8年か……

人気のない暗い通路で、私の記憶が遡っていく。

私は、13歳の頃まで、彼女の家の近所で暮らしていた。
彼女、有里さんとも面識があったし、小学生の頃はよく遊んだりしていた。

あの頃の有里さんは、可愛らしい女の子というより、やんちゃな男の子って感じだったかな。
いつも公園の中を走り回っていて、あの子が人形を持って遊んでいる姿は、全く記憶がないもの。

でも、変わるものよね。
当時の面影もなくはないけど、少女というより、もう、大人の女性って感じだからね。

きっと、恋人もいるんだろうな……
私も……

ただ、あの感じだと、私のことは覚えていないって雰囲気だったな。
……ちょっと、寂しいね。
まあ、仕方ないかも……
あの時とは苗字も変わっているしね。

でも……彼女……
こんな時間に、あの部屋に何の用があるんだろう……
あの部屋は確か……

……あら?
私は、暗闇の通路に佇む人影を見付けた。

あなたは……有里さんと一緒にいた方よね。
ここで、何をしているの……?

…… ……

……うん?
有里さんの力になって欲しいって……?

よく、分からないわね、あなたの言うこと……
彼女のお父さんが入院している意外に、何か問題があるの?

確かに、彼女の父親である、早野勇さんはこの病院に入院している。
そして、彼を担当しているのは、ナースであるこの私……

あっ、ちょっと話がややこしくなってきそうだから、私のことから説明しようかしら……

私の名前は、水上千里。
21歳、独身。
今は、付き合っている男性はなし。
現在、彼氏募集中……

うん、まあこれは冗談だけど、この病院でナースをしているの。
……と、いっても、この病院に勤め出してまだ4日しか経っていないけどね。

なぜ、ここに来たかって……?

それは、いろいろあるけど……
一番の魅力は、お給料かな。
前に勤めていたところよりも、断然いいしね。

それに、ここの内科医部長をしている松山先生に、しつこいくらいに誘われて……それも理由のひとつ。
おまけに、母の介護施設まで紹介してもらって……

私の母は、若い時の無理がたたって、現在はほとんど寝たきりなの……
ここまで、条件が揃えば、まあ、決断するしかないでしょ。

でもね、今はちょっと複雑な気分……
ここは、スタッフの人数、機材の種類と、前に勤めていた病院とは比べ物にならないくらい充実しているわ。
当然、それに見合うだけの仕事も、これから要求されると思う。

私も、ナースになってそれなりに、技能は身に着けたつもり……
当分の間、仕事に慣れるまでは辛そうだけど、モチベーションを高く持っていれば、なんとかなると思う。

問題は、職種の違いかな。
私が以前勤めていた病院は、産婦人科だったの。
入院している方も、生命を生み出す若いエネルギーに満ちた、妊婦さんたち。
まあ、生命が誕生する施設ってこと……

対して、私が配属されたこの病棟は、重い内臓疾患のある患者さんばかり。

今朝も松山先生が診察をしている間、私はカルテに記されている投薬をチェックしながら、患者さんの顔色を見ていたの。

同じ入院している人でも、こうも違うものなの……?
血色の悪い肌色……
やせて、脂肪はおろか、筋肉さえも失った骨と皮だけの細い腕……

看護学校を卒業してからの3年間……
私は、病院勤務をしていながら、人の死に立ち会うことは無かったの。

でも、これがナースとしての本来の業務。
そう思っても、まだやり切れなさのある自分がいる。

……あら。ちょっと愚痴っぽくなったわね。
ごめんなさい。

あなたを見ていると、つい、話さなくてもいいことまで話してしまうわね。

まあ、安心して……
私もナースという仕事を選んだ以上、どんなことがあっても、挫けないから……
そして、ひとりでも多くの患者さんに元気になって欲しい……そう思っているの。

それで、私の抱負はもういいから、早野勇のことを知りたいって……?
……あなた、意外とドライね。

早野勇さんが、入院していることを知ったのは、勤務2日目のことだったわ。
初日は、各フロアーの見学、説明などで費やされて……
実質勤務になるこの日の朝、私は受け持つことになる患者さんのカルテをチェックしていて気が付いたの。

名前を見たときには驚いたわ。
私も小さい頃は、早野のおじさんによく面倒を見てもらったから……

私は、もう一度詳しく、カルテに記されている文字を追った。
カルテには、心臓を中心とした複数の病名が記されていたわ。

医師ではない私には、全て理解することは難しいけど、投与されている薬が保健認可外とすると、症状は相当重いのではないか?
そう思った私は、担当医である松山先生に、詳しい説明を求めたの。

でも、私と早野さんの関係を持ち出すわけにもいかないし……
あくまで、担当するナースとしての、知識を深めたいという理由で……

先生は、言葉を濁しながらも、私の考えていた答えと同じことを言ったわ。
病状は深刻……
治療費も保険が効かないと……

それじゃあ、あの親子は……
思わず顔色を変えた私に驚いたのか、先生は黙ってしまい、最後に一言……

「近い将来、あなたにも分かる」って……

今思い出しても、あの時の先生の目付きって……なんか、いやらしい。
……やっぱり思い出したくない。

確かに、初日に挨拶したときから、全身を舐めるような視線に、悪寒が走って……思ったの。

私って、上司には恵まれないタイプなのかも知れないって……
前に勤めていた所も、嫌な先輩は一杯いたけど、あれは、私の身体を性的な対象として見ていたと思う。

あっ、向こうから松山先生が歩いて来る。
噂をすればってやつかしら……

また会うことがあると思うから、ちゃんと私のこと覚えておいてね。
それと……これは私の勘だけど、この後大変なことが起きそうな気がするの。
その時は、あなたの助けも必要になるかもね。

……それじゃ、またね。



私は、軽く会釈して先生の横を通り過ぎようとした。

「あ、そうだ水上さん。
今週の金曜日なんだけど、予定を空けておいてくれないかな。
……ちょっと、相談しておきたいことが、あるんでね」

私は薄暗い廊下で、先生の目が怪しく輝くのを見逃さなかった。
なによ、その目……
この人……変なこと企んでいないでしょうね。

「金曜日ですか……
シフトを確認しないとなんとも言えませんが、空けておくように努力します。
それで……何のお話でしょう」

「申し訳ない。ここではちょっと……」

先生は人目を気にする素振りを見せながら、さりげなく私を見下すように見つめた。

「とにかく、その時になったら、私の診察室まで来なさい。
これは、君にとって大切なことだから……」

「大切なこと……?」

「そう……君の一生を左右するほどの重大なことです。
もし、来ないときは、あとで、相当後悔することになるかもしれませんよ。
……と言うのも、君にとってはナースの職業さえ失いかねない大事な話ですからね。
クックックックッ……待っているよ……」

松山先生は、半分脅しのように話すと、有里さんのいる応接室の方へ歩き出した。

……一体、どうなっているのよ。
この病院にいられなくなるって……

私の脳が警戒信号を発している。
これは、何かの罠だと……危ないって……

でも……行くしかなさそうね。
まだ、ナースとして働きたいもんね。

それにしても、有里さん。大丈夫かしら……?

私は、もう一度、応接室に戻ろうとしたけど、どうしてなのか身体が動かなかった。
そこに行けば、またひとつ足枷が増えると、誰かが警告していた。



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屈辱のオナニー報告























(二十六)


八月 十五日 金曜日 午前三時  早野 有里
 


夢を見ていた。

男に襲われ、無抵抗のままレイプされる無垢な私……
男の腰が前後に振れ、少女の純潔な身体を刻んでいく。
逃れようと顔を上げた私を、もう一人のわたしが傍観している。
助けてと叫んでいるのに、かき消される声……
伸ばした腕も、どこかに消えていく。
私は、もう一人のわたしに、目で合図を送った。
逃げてと……
でも、わたしは立ちつくしている。
わたしは気付いた。
ふたりのわたしは、実はひとつなのだと……
……ならば、汚されてはならない。
せめて、もうひとりのわたしだけでも、守らねばならない……



時計の針が、午前3時を指している。

あのまま、眠ってしまったみたいね。
行為を終わらせて、1時間弱……
わたしは、生まれたままの姿で横たわっていた。

それにしても、変な夢……
手足が、だるくて重い……
これって、副島に処女を奪われたときと、よく似てる。

……起きよう。
わたしは、腰の横に手を付くと、ゆっくり身体を起こした。
エアコンの風が素肌に吹き付け、自分が、何も身につけていないことを教えてくれた。

役目を終えたビデオを停止させ、脱ぎ捨てたパジャマの上着を肩から羽織る。
ベッドの下で、丸まったパンツを手に取り、諦めた。

わたしは、汚れた股間を清めると、パジャマのズボンを直に履いて、再びベッドに入った。

「また、パンツ汚しちゃった……
わたしって、小さな子供みたい……
お母さん、洗ってくれるかな……?」

生まれてくる赤ちゃんのように、身体を丸めてみる。
柔らかい安らぎを感じて、心がぼんやりとしたものに包まれていく。
眠くなってきた……
理性さんも一緒に、さあ、もう一度、夢の世界へ……



           八月 十五日 金曜日 午前九時    副島 徹也


「……はい、予定通り順調に進んでいます。
……ええ、もちろん。
伯父さんに満足いただいて光栄です。
……はい……ええ……
今回の作品は、苦労しましたからね。
認めていただき、有り難う御座います。
次回作も、伯父さんに納得してもらえるよう、頑張らせていただきます。
…… ……
……はい、伯父さんの気持ちは、よく分かります。
ただ、急かすのはどうかと……
なにしろ、材料が初心すぎます。
ここは、焦らずじっくりと……
……はい……はい……
では、私の判断で、やらさせてもらいます。
……許可していただけますか?
…… ……
……はい、有り難うございます。
誠心誠意、伯父さんの希望に添えるように努力致します。
……ああ、言い忘れるところでした。
もうひとりの件ですが……
……はい。
準備が出来次第、実行に移します。
後しばらくお待ちください。
……では、失礼致します」


私は、携帯をサイドテーブルに投げ置くと、目頭を押えた。

「今、何時だと思っているんだか……」

時刻は、午前9時……
だが、私にとっては、真夜中に等しい。
私の一日の始まりは正午から……そう勝手に決めて久しい。

まあ、伯父さんにそれを言っても通用しないが……
欲しい物は、どんな手段を使ってでも手に入れる。
金、会社、人材、そして、女までも……
ついでに、私の時間も……

イラついても仕方がないが、中途半端な時間に起こされてしまった。
つい先日も、有里の付き添いで、徹夜? をしたというのに……ついてない。

「こうなったら、起きるしかありませんねぇ」

私は、携帯をひらくと、昨日、有里に送ったメールを読み返した。
指示には従っただろうか?
少々、ハードルが高かったかも知れない……

「ですが、あの小娘……
大切な者を守るためなら、自分の身体を省みない……
今時、絶滅危惧種みたいな方ですから、面白いかもしれません。
……さあ、朝食でも作りますかぁ」

サイドテーブルに、私は携帯が置いたままにしておいた。
そこのあなた。見たいんでしょ?
どうぞ、ご勝手に……



有里への指示 続き……
次の行為を説明します。

ビデオ鑑賞は終わりましたか?
……さすがに疲れたでしょう。

疲労を取るにはリフレッシュするのが、一番です。
そのまま、ベッドに上がりなさい。
そして、自分を慰めなさい。
始めは、服を着ていても構いません。
ただし、絶頂時は、下半身は裸で、出来れば上半身も……

あと、必ず絶頂まで導きなさい。
手抜きすれば、お仕置きが待っていますよ。
それでは、可愛い有里様の喘ぎ声を期待します。

尚、ノートと撮影記録は、後日回収します。
それでは、楽しいひと時を……   
                  副島



役目を終えたように、携帯の画面が暗くなる。
その横に、意味深に置かれたファイルが1冊……
詳しいレポートに添えられた、盗撮らしい女性のスナップ写真……

どれも、視線がカメラに合っていない。
被写体は、物憂げな表情を浮かべる、黒髪の少女……
名前は、吉竹舞衣。18歳。



           八月 十五日 金曜日 午後零時三十分    早野 有里


わたしが、ベッドから起き出したのは、正午を過ぎてからだった。

朝の7時過ぎに、友だちに講義を休むことを伝えて……
お母さんにも調子が悪いって嘘を付いて……
ただ眠りたかっただけなのに……

わたしって、ここ2、3日でわがままで嫌な女になった気がする。

そうだ……
もう一日、バイトも休ませてもらおう。
どうせ、悪い子になったんだから、これも、ついで……

わたしは、ひとり食卓で遅めの昼食をとっていた。
食べているのは、母が準備してくれた朝ご飯……

わたしだけ、時間の流れが変になっている気がする。
頭がぼーっとして、まだ身体がだるい。

これは、海外旅行で起こると言う、時差ぼけかもしれない。
わたしって、日本にいながら時差ぼけを起こしたんだ。

決して、あの行為のせいではない……
そんなの認めたくないから……

わたしは、昼食を終えると食器を洗い、2階へ上がった。

あらっ? 部屋が散らかっている。
自慢じゃないけど、わたし、きれい好きなの。
まあ、その方が、男の人も喜ぶでしょ。
……それにしても、ひどいわね。

脱ぎ捨てたパジャマに、木綿のパンツ……
ビデオカメラや、テレビは電源が入ったまま……
さあ、生理整頓!

ここは、わざと心を空っぽにして、自分をだましながら、片付けていく。
カメラは、コンセントを引き抜いて、部屋の隅に追いやり……
パジャマもパンツも、汚れたシーツも……全部まとめて、洗濯機に放り込んだ。

「これで、すっきりした……」

あとは……机に置き忘れた1冊のノート……
B5判の何の変哲も無い大学ノートの表紙には、油性マジックで大きな文字……
そして、突風の悪戯に、ノートがパラパラとめくられて……

…… ……?!

目にしたくない文字が並んでいる。
無視していたのに……忘れたかったのに……
記憶が……再生されていく……

わたしは、悲鳴をあげた。

「……?!……イッ……イヤァァァァァーッ!……」

だまされていた心が、気が付いたみたい。



「……♪……♪……」

着メロが鳴っている。

ギラギラとした日差しが大きく傾き、時刻が夕方であることを教えてくれた。

わたしは、うつ伏せのまま、枕に顔を押し付けて泣いていた。

どのくらい、この態勢でいたのかな……
圧迫された胸から肩にかけて、弱い痛みがある。

わたしは、泣き濡らした顔を上げると、袖で涙を拭った。
そして、携帯を取ろうと腕を伸ばし、その手が強張った。
携帯に浮き出た文字に、喉を焼けるようなものが込み上げて、吐きそうになる。

それでも、出ないわけにはいかない。
わたしは、文字通り必死の思いで、携帯をひらいた。
そして、必死の想いは、やはりと言うべきか、報われなかった。

「……はい」

「ごきげんいかが? ……おやぁ? 声が変ですよぉ。
ククククッ……有里様、泣いていたとかぁ……?」

「いいえッ!……泣いてなんか……いません」

「そうですかぁ……残念ですねぇ」

なにが、残念なのよッ!
言い返そうとして、声が詰まった。
涙が……鼻に入って来たじゃない。

「もしもーし……聞いていますかぁ?」

「……はい。で、何の用ですか?」

「いえねぇ。昨日の宿題は、してもらえたかなーと……思いましてぇ……」

宿題という言葉に、胸はズキズキ痛み、止まり始めていた涙が溢れ返ってきた。
でも、こんな男に泣いていたなんて、絶対に気付かれたくない。

「……うぅぅッ……はい……しました」

「えらいですねぇ。さすがは、有里様……
当然、イクまでしたんでしょ……オナニー……ククククッ……」

「……はい」

「もっと、具体的に話してくれませんかぁ。
男の人が、興奮するように……
隠語も、たーっぷり入れて、お願いしますよぉ」

手が震えて、携帯をベッドに落とした。

……そんなの……ムリだよ。
オナニーして、それをカメラで撮って……
それも、全部自分でしたんだよ!
これだけで、死ぬほど恥ずかしかったのに……それを話せって……

「…… ……」

「おや、返事がありませんねぇ。
もう一度だけ、言いますよ!
昨日したオナニーを具体的に話してくれませんかぁ?
男の人が、興奮する隠語付きで……」

脂汗が、おでこからにじみ出して、気分が悪い。
なにか、なにか言わないと……
でも、焦ってしまい、言葉が出てこない。

今回は……今回だけは、勘弁してもらおう。
……でないと、心が壊れそう。

「あの……お願いします。
許して下さい……わたしには……出来ません」

本当に許してよ。
でも……この人は、きっと……

「うーん。困りましたねぇ。
これも、行為の一貫のつもりだったのですが……
それでも、出来ないと……?」

「…… ……ッ?!」

「もう一度だけ言いますッ!
行為をするつもりは、ありませんかぁ?」

「……少しだけ、時間をください」

わたしは、携帯を耳から離した。

どうしよう……どうしたらいいのよ……
もう、選択肢なんて残っていない。
でも……でも……
自分を自分で慰めていたことを、話すんだよ。
それも、いやらしい言葉で……
それって、あそこのことも……?
いやっ!……死にそう。
ううん、死んだ方がマシかも……

「でも……お父さん……」

わたしは、自分の痴態が収められたビデオカメラを、チラッと見た。
続けて、閉まったままの部屋のドアを見つめる。

今、恥ずかしい言葉を口にしたって、ドアが閉まっているから、下にいるお母さんに聞かれることは無いと思う。
それに、わたしの恥ずかしい姿は、既にカメラに収まっている。

今さら口で説明するくらい……何ともない……?!

……わたし。今、何を考えていたの……?
それとも……これが本心……?

「まだですかぁー。飽きてきましたよぉ。
お父さん……死にますよーっ」

「……ううぅぅぅぅッ……!」

副島の心無い、恐ろしい催促に、食い縛った歯の隙間から、呻き声がもれる。
傷ついたわたしの心は、力を振り絞り、それを親子の愛が支えた。

話してあげるわよッ!
いやらしい隠語付きでね……!

きみ。廊下で見張りをしてくれる。
……できれば、耳を塞いでね。

わたしは、携帯を壊れるくらい握り締めて、声を……押し出した。

「……お待たせしました。
ゆ、有里の……お、オナニーの説明をしますね」

大丈夫だから、しっかりと思いだして……
自分を励ましながら……言葉を探した。

「あの……有里は、パジャマの下だけ脱いで、ベッドに仰向けに寝転びました。
そして、胸をはだけて……お、オッパイをもんで、乳首をいじりました。
その後、パンツ、いえ、パンティーの上から……あそこを……」

「駄目、駄目ッ! 何、格好付けているんです。具体名で……」

「は、はい。あのぉ、パンティーの上から……お……お、おま○この筋を撫でました……
…… ……
…… ……
…… ……」

「どうしましたぁ? 泣いているんですかぁ?
さっさと、続きを話してくださいよぉ」

泣くもんですかッ!
ちょっと、言葉を考えていただけ……

わたしは、天井を見上げて、瞬きを繰り返した。
声だけ……声さえしっかり出せれは……
堪えてよ。有里……

「……はい。パンティーの上から撫でていると、ものすごく、お、おま○こから、エッチな汁が溢れてきて、パンティーを脱ぎました。
それで、脚をひらいて、指でヒダの間をこすりました。
そうしたら、ものすごく気持ち良くて、甘い声を漏らしてしまいました」

「オナニーが好きな、あなたのことです。
もっと感じる処をいじったんでしょ」

「……クゥッ! はい。有里の大好きな、ク、クリトリスもいじりました」

「クリトリスは、どうなっていましたかぁ?」

「……堅く尖って、充血していました」

「感じましたかぁ?」

「……はい。ジンジンとする感じで気持良かったです。
それで、もっと刺激が欲しくなって、膣にも指を入れました」

「処女を失ってすぐだと言うのに、指を突っ込んだんですかぁ?
それは、また大胆な事で……」

「ええ。有里は、オナニーが好きですから、指も入れちゃいました。
……気持ちいいんですよ」

「それで、何本……?」

「はい、2本です。
でも、痛くなかったですよ。
だって、ビショビショで洪水みたいですから……
それで、穴の中をスリスリと、こすっていると、身体がどんどん軽くなって……」

「イク時は、どこをいじって……?」

「最後は、膣とクリトリスと乳首を、同時にエイッて感じで……
つねったり、こすったりして……
そうしたら、簡単にイッちゃいました。
…… ……
…… ……
こ、これで、どうでしょうか……?」

「うーん。表現力がイマイチですねぇ。
まあ、今回は合格としますが、もっとエッチなゲームみたいに話してくれないと、男の人は勃起しませんよぉ。
今後は、研究でもしてみたらいかがですかぁ?
……なんなら、お貸ししてもいいですよぉ」

副島が、なんかしゃべってる。
どうせ、わたしを辱めようとして、くだらないことを話してるんだろうな。
どうしようかな……?

「そうですか。すいません。
あのぉ、携帯の電池が無くなりそうなので、失礼します」

「もしもーし、まだ、話しはおわ……プチッ!」

わたしは、携帯を閉じると、ベッドの上でうつ伏せになった。
そして、頭から布団をかぶせる。
熱い蒸れた空気が一瞬で顔を覆い、不快な静けさがやってくる。

終わったの……?
気が付けば、顔を枕に押し付けていた。
これなら、声が漏れることもないよね。
良く頑張ったね。有里……
さあ、思いっきり泣こう。
泣いて、死ぬほど泣いて……全部きれいさっぱり忘れよう。
……きっと、気持ちいいよ。
そうして、明日から新しい心で生きていこう。
さあ、今から号泣だからね。

きみ。ちゃんと見張りしていてよ。
勝手に夕ご飯食べたら、承知しないよ。



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オナニーという宿題























(二十五)


八月 十四日 木曜日 午後九時  早野 有里
 


「これ、どうなっているのよッ!」

夕食後、わたしは、文字通り悪戦苦闘しながら、ビデオカメラと格闘していた。
昔から、電気機器には弱かった。
……と、いうより、機械に強い女の子の方が、珍しいよね。

大体、この分厚い説明書を読めっていうの……?!
こんなの眺めていたら、また睡魔が、こんばんわって挨拶してきそう。

それでも、苦心の末、三脚にカメラを取り付けることには成功した。
さあ、ここからが難題……

カチャッ、カチャチャ、カチャッ、カチャチャ……

説明書を読みたくないので、操作ボタンを適当に押しまくる。
あーでもない、こーでもないと……努力した結果……? 
どうにか映せるようになり、わたしは、わたしを褒めてあげた。

そして、ベッドが映る角度を何度か調整して、納得したようにうなづくと、撮影ボタンを押した。

ブーン……ッ

低いモーター音と共に、レンズ下の撮影ランプが黄色く光り、誰もいないベッドを映し始める。

わたしは、急いでベッドの上でおひざをすると、レンズを見つめた。
じぃーっと1分間……
瞬き以外、全く動かずに……

こういう時って、どうするの?
上半身だけで、何か踊ってみるとか……
……でも、変だよね。

「……もういいかな」

わたしは、液晶モニターをくるりと返すと、迷いながら再生ボタンを押す。
液晶画面が一瞬揺らいで、1分前のわたしが映っていた。

……彼女は、笑っていなかった。
いつものポニーテールの髪を解き、ストレートな黒髪を肩で揃えた彼女の瞳は、挑むようにレンズを見つめている。

そこには、周囲に愛嬌を振りまく、いつもの明るい彼女はいなかった。
自分の背中に、家族の幸せを背負っている、わたしがひとり映っていた。



それから、2時間後……

「お母さん……もう、寝たかな……?」

わたしは、ぽつんとつぶくと、内から部屋のドアをロックした。
「カチャリ」と、滅多に使われない鍵が音を立てる。

そして、銀色の円盤を機械に差すと、再生ボタンを押し、テレビをつけた。
時刻は午後11時……
あまりのんびりとは、していられないようね。

ベッドに上がり、枕を抱え込むようにして、三角座りをする。
手元には、1冊の大学ノート……

これから、約1時間余り……
エッチなビデオを、ひとりで暗ーく見なくてはならないの。
目をそらすことも、うつむくのも禁止。
ひたすら見続ける姿を、ビデオカメラが証拠として、記録しているんだから……

テレビ画面に、突然テロップが映る。

シーン 1  早野有里 挨拶

カメラがズームアップして、レポート用紙を握り締めた少女を映し出す。
その、わたしそっくりな少女は、屈辱的な宣言文を読み始めた。
顔を赤らめ、時々辛いのか声を震わせている。
それでも、健気に笑顔は絶やさない。

……この女の子、中々やるわね。
そう思いながら、わたしは、2時間前の自分を思い出していた。



メールの着信音が部屋に響き、わたしは髪を乾かす手を止め、携帯をひらいた。
送り主は見なくてもわかる。
きっと副島……
本当は、このまま削除したいんだけど……そうもいかないよね。

チェックしながら、携帯を持つ手がガタガタと震えた。
これじゃ、読めないよ。

わたしは、机の上に携帯を置いて、顔を近づけた。
液晶に汗がポタポタと垂れる。

……今度はなに? 
せっかくお風呂に入ったのに……わたしの顔、汗まみれになってた。

細々と記された指示内容をチェックし終えると、わたしは早速準備に取り掛かった。
箱から三脚とビデオカメラを取り出す。

不思議と哀しくなかった……
辛くもない……
早く片付けて眠る。
今のわたしは、そう思い込もうとしていた。



映像が流れ始めて、30分……
なるべく画面から目を離さないようにして、時々一時停止ボタンを押す。
そして、手元のノートに書き込んでいく。

きみ。傍から見て、わたしが何をしているか分かる……?
目を細めて、眼差しが真剣だから、テスト勉強をしている……?
ブブー……違うわよ。

お風呂から上がってかなり経つのに、白い肌は薄いピンク色のまま……
無意識に吐き出す荒い息……
たまに、びくっと身体を震わせて、手に持ったノートを取り落とす。
それでも、目をそらさない。

これで、分かったでしょ。
……分からないの? 
……もういいッ。先に寝ててよッ!

画面の少女は、生まれたままの姿で、様々な痴態を演じ続けている。
赤く手形に染まったふくらみ……
時折、開いては閉じるヒップの割れ目……
そして、恥ずかしい陰毛の下で、いやらしい液を垂らし始めた、赤い肉の狭間……

わたしはおろか、相方の男さえ見えないシーンが、映像となって蘇る。

それを、ワンシーン、ワンシーン、チェックするように観察しては、震える指でノートに記していく。
滴り落ちる汗が、紙に染み込み、ジャマをした。

やがて画面の少女は、断末魔に近い哀しい声を発して、つま先を思いっきりのけ反らした。
男のものをお腹に飲み込んだだまま、身体を硬直させ、閉じたまぶたからは、涙が溢れ出している。
そして、画面に映し出される残酷な五文字……

処女膜喪失!!

わたしもまた、哀しくなった。
大粒の涙がぽたぽたと、とめどなく落ちてくる。
時折むせ返りながら、声を押し殺して泣いた。

咽び泣くわたしの傍らに、ひらいたままの携帯が置いてある。
画面には、副島からのメール……



先程は、失礼しました。
次に書いてある行為を、必ず実行しなさい。
行為の間、カメラの撮影ボタンは、ОNにしておくこと。
テレビの音声は、カメラが拾える程度に、出しておくこと。

ここからは、行為の内容です。
最初に、箱に同封してあった、DVDを見なさい。
そして、同じく同封してあるノートに、詳しく記録を残していきなさい。
ノートの中は、こうなっていると思います。

    シーン 12

  有里  おま○こ責め
おま○この状態及び、その他観察内容

 色           詳しく
 形           詳しく
 濡れ方         詳しく
 喘ぎ声         詳しく
 その他……

なるべく詳しく、具体的に記しなさい。

有里様の表現力が試されます。
男が興奮するような、いやらしい表現を楽しみにまっています。

次の行為を説明します……


1時間余りで見終わる予定が、2時間以上掛ってしまった。
時刻は、午前1時過ぎ……

こんなに遅くまで起きていたのは、受験勉強以来かな。
頭がぼーっとして、身体がけだるくて……熱い。

朝、起きられるかな。
駄目だったら、学校休もう。
そして、思いっきり眠るんだ。
眠って全て忘れて……バカになればいい。
……そうだ、そうしよう。

そのためには、もうひとつの行為も、さっさと片付けよう。
今ならバカなもうひとりのわたしが手伝ってくれる。
……急がないと、理性の足音がする。

わたしは、書き終えたノートを乱雑にバッグに押し込むと、再びベッドに上がった。
そして、カメラの撮影ランプを確認すると、お尻を浮かせながら、パジャマのズボンを素早く脱いでいく。

……そう、今からオナニーをするんだ。
それも、カメラの前で……
誰にも見せない恥ずかしい行為……
冷静になったら、こんなこと出来ない。

だから今のうちに……わたしの理性が、帰って来る前に……

急かす心に指先がうろたえる。
引きちぎるように、パジャマの上着をはだけると、仰向けに寝そべった。

そっと右手の指先を、胸のふくらみに這わせ、左手の人差し指はくちびるに……
これが、わたしのオナニーの始め方……

胸の鼓動を手のひらで感じながら、ゆっくりと柔らかく、乳房を包み込む。
右手の手のひらで円を描くように、軽いタッチで優しく優しく撫でるように……

その状態で、前歯で軽く指を噛むと、安心感が湧いてくる。

「はぁっ、んふっ……」

ほら、手のひらに堅い突起が……ちょっと、くすぐったいかな。
眠っていた乳首が起きて来た。

あの男のやり方は、乱暴で痛いだけ……

ごめんね、わたしのおっぱい……
この前は、酷い目にあわせたよね。
お詫びに今晩は、たぁーっぷり可愛がってあげる。

ほら見てぇ、乳房に、気持ちいい汗が浮いてきた。
……そろそろ大丈夫かな。
この汗を伸ばすように、柔らかく、下からすくい上げる感じで……

「あああんっ、ふぅッ……んんんっ……」

胸の奥がきゅーんとなってくる。

指に吹き付ける熱い息……愛おしくてたまらない。
もっと刺激が欲しい……

おっぱいを、手のひらでぐっと押してみる。
指の間から、白いお肉が零れてる。
……でも、大丈夫。全然痛くない。

乳首はどうかな……?
指でそっと、弾いてみる。

「あぅぅぅっ、ふぅーっ……そこぉっ……んふぅぅぅ……」

胸の中を電気が走ったみたい。
もっともっと強い電気を感じたいな。
だから今度は大胆に……

おっぱいを上と下から絞り出して……そうしたら……
すごい、わたしの乳首……
こんなに堅くなって……
人指し指のお腹で、ごしごしと……

「はぁっ、はぁっ、だ、だめぇッ……ふぅんんんっ、あぁぁぁっ……」

勝手にいやらしい声が、漏れてくる。

もう、役に立たないな。わたしの左手……
指が、唾液でふやけてるじゃない。
……でも、許さないよ。
可哀そうだけど、お仕置きしてあげるんだから。
強く噛んで、そう、指先に舌を這わせてと……

おっぱいも、許してあげないよ。
もっと刺激をくれないと……

バストを持ち上げては離し、また絞りこねてみる。
そうだ、乳首も忘れちゃ可哀そう。
堅くなったわたしのさくらんぼ……
先端を弾いて、転がして、爪先を立てる。
そうしたら、頭の芯がパンと響いた。

「はうんんんっ、あぁぁぁぁ、んんんッ……んんんんんんっ……」

だめ、また声が漏れる。
わたしの濡れた指が……濡れたくちびるが……
甘い吐息を隙間から逃れさせ、風のように鳴き出させてしまう。
木綿のパンティーに包まれた、豊かな下腹部の妖しい踊りを、もう止められそうもない。

おっぱいだけなんて、ずるいよね。
あそこも、いじらないと……
わたしの唾液で光る左手は、ゆるゆると這うように肌の上で悪戯をする。
……やっと着いた、わたしの恥ずかしい処……

指先に熱いお湿りが広がってる。
いやだぁ、パンツまでびしょびしょ……

わたしは、恥ずかしそうに瞳を閉じた。
でも、これは演技……
言葉とは裏腹に、麻痺した心は、羞恥の快楽を求めているから……

中指のお腹で、布越しのスリットを何度も往復させる。

びちゅ、ぐしゅっ、びちゅ、ぐしゅっびちゅ、ぐしゅっ……

「ふぁぅぅっ、はぅんんッ……指が……気持いい……」

蕩けるような甘い刺激に、太ももが勝手に閉じたり開いたりする。
我慢できない。
もっと、いやらしくなりたい……

それに、急がないと理性が……

指が、布越しの割れ目に沈むたびに、淫らな染みが面積を広げる。
そんなこと、見なくてもわかってる。

パンツ脱いじゃおうかな……
もう、汚れてるし……

スルッ、スルスル……

わたしは、自分に言い訳しながら、パンツを下ろしていく。
濡れた股間に、エアコンの冷気が吹き付ける。
火照った肌が……気持ちいい。

脱いだパンツは、床にそっと落とした。
やっぱり見たくないよね。

本当は、オナニーする前から濡れていた。
ヴァージンを失くした映像に、わたしのあそこは、淫らに反応してた。

わたしっていやらしい女の子かな……
そんな女の子になりたくないな……
でも、今夜は特別……

両足を少しひらいて、指で探ってみる。
ぬちゃ、って音がした。
やだ、こんなに……?!

おっぱいは、後回し……
あそこを早くいじらなきゃ……

左手で大陰唇の扉を開けて、中のびらびらを右手の指を揃えて縦にこする。
爪を立てないように慎重にそっと……

ぐしゅ、じゅちゅっ、ぐしゅ、じゅちゅっ、ぐしゅ、じゅちゅっ……

「はああぁぁぁぁん、あそこぉ……うんんふぅぅんっ……感じるぅぅぅッ」

くちびるが、勝手に動いた。
……もう、好きにすればいいよ。

また溢れてきた……わたしのエッチな水……
もっと湧きださせてあげるね。
指を折り曲げて、壁の奥まで丁寧にこすって……

ヌチュッ、ぬちゅっ、ヌチュッ、ぬちゅっ、ヌチュッ、ぬちゅっうっ……

「ああぁぁっ、気持ちいいぃぃっ……はんんうっ、ぁぁあはんっ……」

絡みついたエッチな水が、油みたいにすべりを良くしてくれる。
でも、これだけでは、物足りないの。
もっと刺激が欲しい……

わたしは、指にたっぷり蜜を塗り付けると、もうひとつの感じる処……
クリトリスに丹念にまぶしていく。

堅くなってるわたしのお豆……
指が触れるたびに、どくんどくんと……波打つような刺激を脳がひろっていく。

「ふああぁぁぁっ、すごい……感じる……んあぁぁぁっ、はうぅぅッ」

2本の指で挟み込み、軽く捻ってみる。
思わず肩が震えて、お腹から全身へ強い電流が流れる。
声が出たけど、聞こえない。

もう、お上品にすることなんかないよね。
もっと足をひらいて……うん、これなら、やりやすいかも……

思いっきり両足をひらいて、左手の指は、エッチな水が溢れる割れ目を……
右手の指は感じるためだけの性器、クリトリスを……
それぞれ、こすって弾いて、こねくり回す。

ぬちゅっ、じゅちゅっ、ぬちゅっ、じゅちゅっ、ぬちゅっ、じゅちゅっ……

「ふぅぅぅぅんッ、気持ちいいぃぃッ、クリトリス……いいぃぃんんッ」

ヒザが震えて、腰を左右にくねらして、乱れた髪がおでこに張り付いている。
いやらしい卑猥な単語を、恥ずかしげもなく口走った気もする。

でも、どうだっていいの。そんなこと……
もう少しで届きそうだから……
早く終わらせて……わたしは眠るんだ。

チュプッ、ズブゥゥゥッ……

指を膣口に差し入れてみる。
……もっと深くまで指を沈ませよう。
今なら痛くないし、怖くもない……

指が2本、根元まですっぽり突き刺さる。
温かい……
わたしの膣ってこんなに暖かいんだ。

あの男も、この感じを味わったのかな……?
何だか悔しいな……

軋んだベッドに反応して、うっかり、ビデオカメラを見てしまった。
……現実が、帰って来る。

チュプゥッ、ヌチュッ、チュプゥッ、ヌチュッ、チュプゥッ、ヌチュッゥゥッ……

わたしは、焦ったように指を突き動かした。
指のお腹が、膣壁をこすって、滲み出てくるエッチな液を、根こそぎ掻き出していく。
右手の指は、尖った切っ先を狂ったように弾いて、潰して、嬲りまわす。

もう少し、もう少しだけ待ってちょうだい。
わたしの理性……

絶頂の快楽を思いっきり感じたいの。
だから、両足を踏ん張って、腰を高く掲げて、あそこを突き出して、両手の指で愛撫を繰り返した。

溢れたお汁が、股間を伝ってシーツを汚して……
くちびるが、エッチな喘ぎ声を何度も口にした。
……でも、何も感じない。

チュプッビチュッ、チュプッビチュッ、チュプッビチュッ、チュプッビチュッ……

膣に突き刺した指を、激しく往復させる。
水溜りに足を踏み入れたみたいな音が、部屋にこだまする。

……気持ちいい頂上が見えてきた。
わたしは見えない両手を広げた……

「はあぁぁッ、はあぁぁッ……もう……きもち……いいぃぃぃッ……」

子宮に届きそうなくらい、グッと指先を突き入れて、同時に手首をクリトリスに押し付ける。
空いた左手は、つぶれるくらいに、乳房をもんで、乳首に爪を立てた。

ぬちゅぅぅッ、ビチュぅぅッ、ぬちゅぅぅッ、ビチュぅぅッ、ぬちゅぅぅッ、ビチュぅぅッ……

何かが弾け飛んだ。
……瞬間、全てが真っ白になった。
何かを叫んで、唾液が宙を舞った。

「はああぁぁぁぁぁッ、イッ……イッ……イクぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ、んんんんんんぅぅぅぅぅッ……」

つま先立ちで高く反らした下腹部が、ピンと跳ね、ゆっくりと落下する。

終わった……
これで終わったんだ……

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……あぁっ」

わたしに取り付いた夢魔は去っていき、理性がしばらくと言って帰って来た。



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     この小説を読もうかなーって、お迷いの皆様へ

               主人公、有里からのお願い聞いてね♪♪


この物語は、可憐な美少女たちがオオカミのような男の人たちに、口では言えないような恥ずかしいことをされちゃう内容なの。
世間では、こういう小説のことを、アダルト小説。
要するに、大人の人しか読んではいけませんってことになっているわけ。


だから、未成年の方で、この小説に興味あるなーって、思ったら……

うーん……

申し訳ないけれど、潔くあきらめてもらうか、大人になるまで待って欲しいな。

あっ、今大人って言ったけど、一応18歳以上のことだからね。

ただし、大人の人でも、現実と空想の境界線が、あいまいになっている方は、遠慮してね。

あと、性表現に嫌悪感をお持ちの方も、きっと不愉快になると思うから、読まないほうがいいよね。

尚、この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません。

というお堅い文章も読んでもらって、以上の項目を了承された皆様、お待たせいたしました。

     ようこそ 少女涙の羞恥生活へ……♪♪

ぅぅううううッ、本当は有里、恥ずかしいから読んでもらいたくないんだけど、作者さんが、ムチを片手に脅してるの。

だから笑顔でご案内。

本文をお読みになる方は、ぜひカテゴリをご利用になってくださいね。
有里のエッチな行為が、順序よく堪能できると思うよ。

ではでは、他のヒロイン共々、作品の中でお会いするのを待ってまーす♪♪
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