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風変わりな用心棒 ちょっとだけいい話























(十七)


八月 十二日 火曜日 午前零時十分  早野 有里
  


        その人が現れたのは、わたしが携帯を掛け終わった直後だった。
        ノックの音がして、こっちの返事も待たずに、扉がひらかれていた。

        また、あなたなのね。
        立っていたのは、大柄で怖い人……
        そう、わたしをこの応接室まで、案内してくれた、この病院の職員さん?

        それにしても、この場所にいたようなタイミングの良さ……
        それに、突然扉をひらくなんて、失礼よね。
        少なくても部屋の中にいるのは、心に傷を負った悲劇のヒロインなのに
        ……

        わたしは警戒するように、失礼な人をジロリと睨みつけた。
        そして、あなた、そのカギ穴から覗いていなかったでしょうね……と、
        心の中でつぶやいた。

        なぜ、言い返さないのかって……?

        それは……わたしが、か弱い悲劇のヒロインだから……それは、冗談。
        本当は、ちょっと変わった人だったから。

        というのも、この部屋に入ってからずーっと、遠い目で一点をみつめて
        いる。
        その間、扉から少し中に入った場所で、全く動く気配なし。
        その上、相変わらず無口で無表情……
        何を考えているかも分からない。

        ね、変な人でしょ。

        仕方ないので、ここは下手に……

        「あのぉー……? 副島さんから、あとのことはあなたに聞けと言われ
        て……それで……シャワーを使わせていただけませんか……?」

        「…… ……」

        「あのーぅ……?」

        変な人は、初めて会ったときと一緒で、あごをしゃくって、部屋に隣接
        するバスルームを示した。

        「なんなの、その態度……ッ!」

        思わず、カッとなってつぶやいて、慌てて口を押さえた。

        どうして、一言もしゃべってくれないのよッ!
        機嫌でも悪いの……?
        それとも……性格? ……仕事柄?

        ……まさか、一緒にシャワーを浴びる気じゃ……ないでしょうね。

        そう思って後悔した。
        頭の中に、副島の顔が浮かんで、ニターッて笑い掛けてきたから。

        ……でも、この人……その気はなさそう……

        さっき部屋の中で固まっていたように、バスルームの入り口でまた固ま
        っている。
        表情も、まったく変化なし……

        ちょっと変わった人だけど、とんでもないことは……しない気がする
        ……これなら大丈夫かな。

        わたしは警戒心を解き、バスルームのドアをひらいた。

        でも、一言だけ忠告を……
        「覗かないでね……!」って……



        30分後、さっきと全く同じ場所で、無口な人は固まっていた。
        姿勢も全く同じ、直立不動状態……

        まるで、番兵か用心棒みたいな人……
        ちょっと不気味でおっかないけど、あの男とは全然違う。
        なんて言ったらいいのかな。純粋な人としての心を持っている感じ?

        ……この人なら、わたしのお願い……かなえてくれそうな気がする。

        ここは、さりげなーく、下から上目づかいで……

        「あのぉ、頼みたいことが有るんですけどぉ、聞いてもらえますぅ……?」

        「…… ……」

        「父の病室まで、案内して欲しいんですぅ。それとぉ……無理かもしれ
        ませんが……そこで一晩、泊らせて、ねっ……?」

        「…… ……」

        「あの……なにか反応してくれませんか……?」

        「…… ……」

        ……せっかく可愛く話したのに、損した。
        やっぱりこの人、固まったままの、ただの変人かもしれない。

        「やっぱり、だめですよね。ここは、夜間の付き添いは家族でも禁止に
        なっているし。ごめんなさい、わがまま言って……あの、ちょっと…
        …?!」

        無口な人は突然動き出し、わたしに背を向けると、部屋を出て入院棟の
        方へ歩いて行く。
        その背中は、まるで付いて来いと言っているよう……な、気がする。

        ……ちょっと、待ってよぉっ。

        わたしは、足音を立てないように気を使いながら、男の背中を追い掛け
        た。
        薄暗い病院の廊下に、足音だけがコツコツと小さく反響する。

        それにしても、この病院って、増築ばかりしているから中が迷路みたい。
        それに、消灯時間を過ぎているから、通路も病室も薄暗くて……
        天井から吊り下げてある案内札も、薄闇に溶け込んだようで確認のしよ
        うがない。

        ……ここは、どのあたりかしら?
        きみは、わかる? 

        …… ……?!

        ……えっ?! いないじゃないッ!
        全く……どこに行ったのよッ!
        もう、肝心なときには、いなくなっちゃうんだから……

        もう少し、ゆっくり歩いてよ。
        わたしがそう思っても、前を歩く人には気が付いてもらえない。
        それどころか、ストライドの幅を生かすように、どんどん加速していく。

        こんなところで見失ったりしたら……頭の中をいろんな想像が走り始め
        ている。

        オバケ、ユウレイ、オバケ、ユウレイ、オバケ、ユウレイ、オバケ、ユ
        ウレイ……

        「もう、待ちなさいよぉっ……」

        思わず出した声は、震えていた。

        わたしは、男に追いつこうと無理をして速足で歩いた。
        太ももどうしが、歩くたびにこすれるように触れあってしまう。

        ……やだぁ。また、痛くなってきた。

        腿のつけ根を、鈍い痛みが襲ってくる。

        もしかして……出血とかしてないよね……?

        あそこから流れ出た血が、下着を汚すのを想像して身震いする。
        そうしたら、自然と歩くスピードがゆっくりになった。

        ……どうしよう……はぐれちゃった。

        案の定、見失った。
        暗くて無音の世界に、わたしの息づかいだけを、耳が捉える。

        ……こわい……

        「コツ、コツ、コツ、コツ……」

        足音が聞こえる。
        それも、だんだん近くなってくる。
        通路の先に人影が現れ、足音に合わせるように近寄ってくる。

        ……まさか……
        オバケ、ユウレイ、オバケ、ユウレイ、オバケ、ユウレイ、オバケ、ユ
        ウレイ……

        「……だれ……?」

        小さい心細い声で聞いた。

        「…… ……」
        「……?!……」
        「……あなたは……!」

        目の前に立っていたのは、無口なあの人……
        心配して、戻って来てくれたのかな……?

        女の子をこんな怖い目に会わせて……出来の悪い用心棒さんね。
        そう思ったけど……どうしてかな……やっぱり嬉しい。

        わたしは何も言わずに、感情のない目に視線を合わせた。
        そこに、昔懐かしい、なにかキュンとなるものを感じた。

        ……わたし……この人と、どこかで……?
        ……でも、今は思い出せない。

        ……それにと言って、現実が悲しい思いを、胸に注ぎ込んでくる。

        ……多分、この人は知っていると思う。
        今夜、あの部屋で……わたしが何をさせられたのか……
        胸の中に、現実という名の酸っぱい悲しみが広がった。

        怖くて不気味な暗闇だけど、ほんの少し感謝しようかな。
        目が潤んでいるのに、気付かれなくて……ほんと良かった……

        その後、無口な人は、6階の個室フロアーまで、わたしを無事に案内し
        終えると、暗闇に溶け込むように去って行った。

        わたしは、消えていく男性に頭を下げながら、胸の中でつぶやいた。

        ありがとう……ちょった風変りなボディーガードさん。
        次に会うときには、何かしゃべってね……



        「さあ、お父さんの病室へ行かないと……」

        無口な人がいなくなって、今度こそ、わたしひとり。
        音も無く静まりかえった廊下は、うす暗くて、なんだか寒々しい。

        わたしは、非常灯の明かりを頼りに、暗い廊下を怖々と歩いた。

        「……早野勇……」

        お昼間とは違う雰囲気の中、父のネームプレートを見付けて、ほっと胸
        をなでおろす。
        そして、静かに扉を引いた。

        お父さん、会いにきたよ……

        暗い室内から、規則正しい寝息が聞こえてくる。
        そっと、足音を忍ばせながら、父の眠るベッドに近づいていく。
        昨日も、今日も会っているのに……無性に懐かしくて、せつない思いが
        胸を突き上げた。

        それなのに……顔を見るのが怖い……
        こんなに会いたかったのに……なぜかな……?

        わたしは息を止めて、枕元に寄り添った。
        そして、寝息を立てる父の顔を、そっと覗き込んだ。

        暗闇の中で、死んだように眠る父……
        痩せて精気を失った顔が、仄かに浮かんでいる。
        それでも、胸の確かな上下が、生を教えてくれた。

        わたしは、眠る父に話し掛けた。
        ただし、起きないように、小声でそっと……

        「……お父さん、ごめんね。こんな遅くに会いに来て……
        理由は……聞かないでよ。わたしにも、色々あるんだから……
        あ、お母さんとわたしが、昼間会いに来たこと、お父さん知ってる……?
        今日だけじゃない。毎日だよ。
        ……そう。この1週間、家族3人水入らず……
        みんな、応援してるんだから、お父さんも頑張らなくちゃだめだよ。
        …… ……
        ……わたしもね……がんばったんだよ。
        少しは、ほめてもらいたいな。
        ……それとも、怒られるかな。
        …… ……
        ……どっちでも、いいよ。
        わたし、お父さんの病気が治るなら……ううん、なんでもない。
        早く良くなって、また、家族一緒に暮らしたいね。
        それと……今日は、ここに泊っていいでしょ。
        お父さんと一緒に、いてもいいでしょ。
        ……そうしたら、明日からも頑張れそうだから……」

        ……父の寝顔が、揺らいだ。

        わたしは、音を立てないように丸椅子に腰かけた。
        張りつめた糸が切れたように、手足の力が失われていく……

        いつまでも、寝顔を見ていたかったのに、睡魔が迎えに来たみたい。

        ……わたし、ちょっと眠るね。
        おやすみなさい。お父さん……

        まぶたが自然に閉じられ、身体が壁に寄り掛かっていく。

        夢の中で奏でられていたのは、お父さんとわたしの寝息のハーモニー……
        けっして、歯ぎしりとイビキではないので……あしからず。

        ……どう。ちょった泣けた?





副島と松山 ふたりのライバル























(十六)


八月 十一日 月曜日 午後十時四十分  副島 徹也

   

        ……ガシャンッ……!!

        私は、自分で閉めた扉の音に更に苛立った。

        「よくも……この私を……ッ!」

        続きの言葉を何とか封じ込めると、ふっ切るように足早に歩き始めた。

        今なら、もう一度……!
        もうひとりの私が、そそのかしてくる。

        確かに、あの時はそう考えていた。
        動くことすら出来ずに股間をさらしたままの小娘など、なにも躊躇する
        必要などなかった。

        ……だが、動けなかった。
        いや、ある物体のせいで動けなかった。

        黒いレンズは、有里の痴態を撮影する役目を負うと共に、監視カメラの
        役割も果たしている。

        ……危なかった。
        あのまま膣中に出していたら、自分は間違いなく能力なしとして消され
        る。……あの男なら、やりかねない。


        「これは、これは……遅くまでのお仕事……御苦労さまです」

        背中越しに、皮肉混じりの声を浴びせられ、私は振り返らずに立ち止ま
        った。

        この声は確か……松山……?!

        「美少女の肌は、いかがでしたか……?
        よろしければ、ご感想など……クックックックッ……」

        私が黙っているのを幸いに、一方的に話し掛けてくる。
        わざと怒らせて感情を爆発させたいのか、それとも……?

        「どうされました……? 私には話すことなど無いとでも……」

        相手にされないことに苛立ったのか、声質に不満が見え隠れしている。

        ふふふふっ……

        ここは、彼に感謝した方がいいかもしれない。
        不思議なことに、さっきまでの苛立ちが嘘のように静まっている。

        「ああ、これは失礼。……つい、考え事をしていまして……
        それより、松山先生。こんな所で、何をしているのです……?
        あなたの役目は、早野有里の説得までのはずですが……
        それとも、私に何か用でも……?」

        もう大丈夫だ。

        私は冷静沈着な、本来のしゃべりに満足した。

        それでは、聞かせてもらいましょうか……松山先生……

        嬉しさを押し殺しながら振り返り、男の目に視線を合わせる。

        「いえいえ、ただ……通り掛かっただけですよ。
        あまりに、副島様が難しい顔をしていたものですから……つい、気にな
        りましてね……」

        さっきまでの、主導権を奪っていたかのような饒舌はどこへやら……
        声がしどろもろに成り始めている。

        ここで一喝して、本音を吐かせるのも一興ですが、さすがの私も今日は
        幾分疲れている。

        ……仕方ありません。見逃してやりましょうか。

        「……そうですか……ご気遣い感謝致します。
        これからもお互い、健康には気を配りたいものですね。それでは、失礼」

        私の背中越しに、安堵する松山の姿が目に浮かぶようだ。
        丁度良いストレス発散になったかもしれない。

        ……だが、一つだけ気になることがある。

        私の後ろから声を掛けておきながら、表情など分かるはずがない。
        この男、監視でもしていたのだろうか?

        もう一度問い質そうと、後ろを振り返ったが、暗い廊下の先に松山の姿
        はもうなかった。



八月 十一日 月曜日 午後十一時三十分    早野 有里



        ……少し眠っていたのかな。
        時計の針が、11時三十分を指している。

        わたしは、室内に誰もいないことを確認すると、うつ伏せの身体を慎重
        に引き起こした。

        「ふーぅ……ひどい……」

        白い名残が肌の至るところに、ベットリとこびりついている。

        それに……やっぱり……
        お尻の下には、透明な怪しい水溜り……

        本当にお洩らししたみたいに見える。
        でも、その方が良かったかな……却って可愛らしくって……

        それなのに、鼻につくいやらしい女の匂いが、この水の正体を教えてく
        れる。

        ……全て消し去ってしまいたい……

        わたしは、テーブルに置いてあったウェットティッシュを数枚抜き取り、
        そっと股に挟んだ。
        そのまま肌に残る白い点を、一つづつ丁寧に拭いとっていく。

        ……これで、表面上はきれいになった。
        残るは……?!

        ティッシュの挟まれた下腹部を、怖々覗いてみる。

        ここもキレイにしたいんだけど……やっぱり勇気いるよね。

        わたしは恐る恐る太ももひらくと、丁寧に慎重に、秘部を清めていった。

        こんな姿、誰にも見せたくない。
        そう思うと、つい指先に力がこもってしまう。

        「……痛ッ……!」

        ティッシュの繊維が、哀しい傷跡を興味本位で舐め上げた。
        白が……薄紅色に染まっている。

        「……有里のヴァージン……」

        涸れ切ったはずの涙が、つーっと、ほほを伝った。

        「……うっ、うっ、ううぅぅッ、ううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ……わ
        あぁぁぁぁぁぁぁぁっ……」

        忘れていた感情が帰ってくる。

        わたしは、堪えていたものを全部出しきるように、大声で泣いた。
        大粒の涙が鼻に入り、むせ返りながらも泣いた。

        泣き声が外に漏れたって構わない。
        思いっきり泣いて忘れようとした。
        全部、忘れてしまいたかった……

        どれだけ泣いたのかも、はっきりと覚えていない。
        生まれて初めてかもしれない、こんなに涙を流したのって……

        ただ泣き疲れてじっとしているうちに、死んでいたはずの羞恥心が息を
        吹き返してきた。

        わたしは、今更ながらに顔を赤らめて、脱ぎ捨てた服の山に向かった。

        手早く下着を身に着ける。
        次第に、2時間前の少女に帰っていく……

        「……早野有里は、明るさだけが取り柄の女の子……
        どんなことがあっても、負けないからね」

        気恥ずかしかったけれど、声を出して言ってみた。

        元気が湧いてきた気がする……
        わたしって……単純なのかな……?



        ……そうだ。ちょっと驚かしてやろう。

        そーっと、背もたれの上から……「コンコンッ」……そして、「ワァーッ
        ……!」

        なによ、わかっていたの?
        ……面白くないわね。

        ……ところで、きみねぇ……
        わたしが、せっかく最後の試練は一緒にって、言ってあげたのに、ソフ
        ァーの後ろに隠れていたでしょ。
        ……この、裏切り者!って叫ぼうと思ったんだから。

        ……でも、本当は励ましてくれていたんだよね。
        わたしには、わかっていたよ。
        ソファーを挟んで、きみの気持ちが……

        痛みと恐怖に耐えているわたしを、一生懸命励まして……
        そして、快楽に落ちて行きそうなときには、必死に手を差し伸べてくれ
        た。

        あの時のきみがいなければ、どうなっていたのか……思っただけでゾッ
        とする。

        ……ありがとう……
        これからも助けてね……わたしのパートナーさん。


        …… ……?!

        ところで……今何時……?

        ……えっ、0時前って……!

        ちょっとぉっ! どうして、教えてくれないのよっ!
        お母さんに早く連絡しないと……

        うっかりしていたな。お母さん心配しているだろうな。
        ……もしかしたら、あきれて寝ているんじゃないかな。

        わたしは、急いで携帯を取り出した。
        ……起きているかな?

        「トゥルル、トゥッ……はい。……有里ぃっ……? 有里なのッ……?」

        懐かしいお母さんの声……

        早く話さないといけないのに、きっと声が震えている。
        わたしは心を落ち着かせて、祈るような気持ちで……

        「……あっ、お母さん……?
        ……ごめんね、連絡するのが遅くなって……
        …… ……
        ……うん……うん……
        ……それでね……今晩、友だちの所に泊ることにしたから。
        今っ……? その……友だちの家。
        ……えっ、女の子どうしだよ。
        まさか男の人が一緒だとか……?
        そんなこと……ないでしょ。
        …… ……
        ……うん……わかった……
        ……じゃぁ、明日の朝帰るからね。
        おやすみなさい……はぁー……」

        正直に話せたのは、最後の部分、明日の朝帰り……それだけ……
        それ以外は、ぜーんぶデタラメ……

        ごめんなさい、お母さん……今日、何度言っただろう。
        これからも、このセリフのお世話になりそう。

        ……やだなぁ、また涙が流れてきちゃった。

        さあ、ここはきみの出番……
        ちゃーんと、わたしを慰めるんだよ。




初体験 その後






















(十五)


八月 十一日 月曜日 午後十時三十分  早野 有里

   

        取り敢えず、危機は回避されたみたい。

        でも、あの人大丈夫かしら?
        あまりにもの咄嗟の出来事で、わたしにも何が起きたか良く分からない
        の。

        「……よくも、この私に……」

        ぼそっとつぶやくような声が聞こえて、そーっと振り向くと、憎悪の炎
        に染まった両目が……!

        やっぱり、大丈夫じゃないみたい。
        今さら、ごめんなさいって謝っても、許してくれそうもないよね。
        もしかしたら、わたし……殺されるくらい犯されるかも……?!

        ……でも、動けないよ。
        ……体力も限界。
        恥ずかしいくらいあそこが丸出しで、それなのに、太ももを閉じ合わせ
        る力も残っていない。

        「ご気分はッ……いかがですかッ!?」

        ほら、来たっ!

        気のせいだと思うけど、語尾が苛立っている。

        わたしは、残りの体力を振り絞って、何とか股だけでも閉じ合わせた。

        でも……もう無理。
        後は、ひたすら謝ってなんとか誤魔化そう。

        …… ……
        ……? ……?
        ……ん?
        まだ、何もしてこない……?

        わたしは、もう一度、そーっと振り返った。

        ……? ……?
        うーん?……?
        ……大丈夫……かな。

        あの人の自慢の息子。シュンとうつむいて小さくなっている。

        「安心なさい。今日はこれ以上、何もしません。
        それより、あなたの拘束を解かないといけませんねぇ」

        副島は、わたしの視線に気が付いたのか、自信喪失気味の息子を片手で
        隠してみせた。
        百パーセント信じたわけじゃないけど、選択肢も残っていない。

        「少し、触りますよぉ。いえいえ、その気はありませんから」

        男の両腕が、肩と腰の下に差し込まれる。
        思い出したくない嫌な感覚が肌を刺激して、思わず小さく叫んだ。

        「だからぁッ、なにもしません。信じて下さいよぉ」

        わたしの身体は、ソファーの上でひっくり返され、顔が、座席部分に押
        し付けられた。
        きっと、美しい背中のラインと、剥き身のようなお尻に、男の両目が釘
        付けになっているのに違いない。

        やっぱり、襲われるかも……? 
        ……まさか、お尻じゃないよね?

        脳裏にいけない想像が流れ込んできて……これって、過剰な自己防衛?
        でも、身体は勝手に、尻たぶの筋肉をキュッとすぼませて、太ももの隙
        間を埋めてしまう。

        「我ながら、ほれぼれする縛りですねぇ。ほら、ここを引っ張ると……
        見事なものでしょう」

        シュッ、シュー……シュー、シュッ……

        生地の擦れる音と手首に訪れる解放感……
        両腕に、久々の自由が戻って来た。

        ……?
        ……と、いうことは?

        「終わりましたよ、有里様」

        ……何も起きないの?
        ……わたしのお尻に触らないの……?
        …… ……

        良かったという気持ちと、なんでよって思う、いけない心……
        でも、身体は勝手に緊張を解き、お尻の筋肉を緩ませた。

        …… ……
        …… ……
        ……パッシーンッ!!

        「ヒィーッ! イヤーッ!」

        肌を打つ乾いた音と、乙女の悲鳴!
        お尻に拡がる惨めな痛み。

        卑怯よ、今頃叩くなんて……それも、思いっきりッ!

        「あっ、これは失礼。つい、うっかり……ははははッ」

        わたしは、うつ伏せのまま、キッと睨みつけて……すーっと目をそらし
        た。
        背筋に冷たいものが走る。

        顔は、笑っているのに……目は笑っていない?
        冷たい……そう、初めて会ったときのあの目……

        これ以上、目を合わせるべきではない。

        わたしは、慌てて顔を伏せて、縄に傷めつけられた手首を愛おしそうに
        撫でさすった。

        そこには、深く刻み込まれた何重にも渡る縄目の跡……
        剥がれた皮膚の下から、血がじっとりと滲み出している。

        「ごめんね……」

        じっと見ていると無性に悔しくなって、まぶたから、また水滴が流れ落
        ちた。

        「あなたの手首の痛々しさ……そそりますねぇ。
        2、3日で傷跡が消えてしまうのが、実に惜しい。
        どうせなら、生傷の絶えない肌をさらすのも、これまた一興ですがね……
        ククククッ……」

        いかにも、この人らしいサディスティックな言葉……

        わたしは心をなだめて、傷ついた手首を男の性的な視線から逃すように、
        ふくらみの下に仕舞い込んだ。

        「ところで、いつまでそんな姿を晒しているのですかぁ……?
        いい加減服を着ないと、風邪を引きますよぉ」

        副島は、脱ぎ捨てた下着を身に着けながら、うつ伏せのまま動こうとし
        ないわたしを、興味深そうに見下ろしている。

        「ほっといよ。行為が終わったのなら、わたしには構わないで……! 
        もう少し……こうしていたいのッ!」

        「ふふふっ……変わったお嬢さんですねぇ。ただ、身体には注意して下
        さいよぉ。何といっても、あなたの行為次第で、お父さんの寿命が変動
        しかねませんから……」

        なにを言われようと、今はこうしていたいの……

        鉛のように重たい手足も休ませてあげたいし、その間に、火照った肌を
        エアコンの風が、心地よく冷ましてくれそうな気がするから……

        でも、これは言い訳かも……
        本当は、男に見られながら下着を身に着けるのが恥ずかしいから。

        行為の後、ベッドからそっと抜け出して、服を身に着ける彼女……
        それを知っていながら、背を向けて寝た振りをする彼氏……

        女の子なら、こういう男性に魅かれると思うけどね。
        ……この人には、絶対無理だろうな。

        それとね。さっき、気が付いたんだけど……わたし、お洩らししたのか
        な?

        腰の下に小さな水溜りがあって、それが太ももにひっついて気持ち悪い。
        ……別に、匂わないけどね。

        「有里様、そのまま寝ていても構いませんが、今晩はどうされますぅ?」

        またなにか言ってる……
        そんなに裸で寝ているのが、気になるのかしら……?

        ……?……今晩……?
        ……だめ、頭がもやもやしてて、今は何も考えられない。

        「なんなら、タクシーを呼びましょうか? 今からだと、11時過ぎに
        は帰れると思いますが……」

        「…… ……」

        「どうされますぅッ!」

        副島が苛立っている。

        ……今晩って言ったよね……
        ……お母さんには……会えないよね……
        こんな顔見せたら……笑顔を作っても、悲しませることになるかも……

        「……あのぅ、このまま、泊まってもいいですか……?」

        「それは、構いませんが……」

        副島は、わたしの心を掴みかねているみたい。
        ……やっぱりこの人、女心が分かっていない。

        「まあ、いいでしょう。分かりました。そのように手配致しましょう」

        「ありがとう……ございます」

        なぜか、お礼の言葉が素直に出なかった。

        「後のことは、あなたを案内した男にでも聞いて下さい。
        連絡しておきますので、しばらく待ってもらえれば来ると思いますから……
        ……ではお先に、有里様……」

        時間を気にしているのか、それとも機嫌が悪いのか……
        やや早口に要件だけ伝えると、副島は後ろ手を振りながら、わたしを置
        き去りにして部屋を後にした。



        「あーあ、行っちゃった……」

        扉が閉まり、静けさを取り戻した応接室に、わたしだけが取り残される。

        散々傷めつけられたのに、心には薄もやのような安堵感だけが広がって
        いる。
        屈辱・恥辱・恐怖、もっと、いろんな感情が湧き起ると思ったのに、も
        っと、もっと辛いはずなのに……涙が出てこない。

        ……どうして? ……どうして……?! 
        ……もう、涸れてしまったの……?
        テレビドラマだったら、こんなシーンで悲劇のヒロインは号泣するのに、
        涙がないと出来ないじゃない。

        「ふふふっ……ははははっ……」

        なーんか、おかしい。

        急にバカバカしくなってきて、そうしたら……睡魔の顔がこっちを見て
        いる。

        やっと終わったんだし、ちょっとだけ休もう。

        わたしは、気だるく少し心地よい気分で、両目を閉じた。





セックスって気持ちいい?!























(十四)


八月 十一日 月曜日 午後十時十五分  早野 有里
   

 
        「ンクゥゥッ、はっ……はぁッ……」

        わたしは、あそこに男のものを飲み込んだまま、口を半開きにして荒い
        呼吸を繰り返した。

        少しでも切り裂かれた粘膜の痛みを和らげたかった。
        中からジンジンと痛みが湧き出してくる。

        悔しいけど、見掛け倒しの肉の塊じゃなかったみたい。

        「私の息子は美味しいですかぁ……?
        だからといって、いつまでもくわえているだけては困りますねぇ。
        これからが、なんといっても本番なんですから……
        ……そうですねぇ。あなたのおま○こで息子の精子を絞り出せば、今日
        の行為を終わりにしてあげます。まあせいぜい頑張ってくわえてくだ
        さい」

        これからが本番……
        そうよ。わたしもこれで終わらないことくらい……わかっている。

        でもね……言い方ってものがあるでしょ。
        あなたの息子は、わたし大っきらいなんだから……

        「また、鳴いてくれますか……?」

        残酷の声が空から降って来て、身体を切り裂く激痛があそこに襲いか
        かる。
        「はッ!」って、わけの分からない気合いを付けて、副島は腰を一気に
        引きそして一気に突き出した。

        一瞬姿を現した肉の棒は、赤い液に染まり飛び散る液もやっぱり赤
        い。

        「ひいぃぃぃぃぃぃッ! もっ、もう少しッ……待ってッ……ンンッッ
        ッッ……」

        せめて初めてくらい優しくして欲しいのに……
        わたしの泣き顔を眺めながら、副島は何度も何度もあそこに突き刺し
        てくる。

        ……中の皮が削り取られていく……!
        あそこがメチャクチャにされる……

        目の前で充血した赤いヒダがまくれ上がって、すぐに穴の中へ飲み込
        まれていく。

        「ハウゥゥゥッ、壊れるッ! ううっぐ、あッ、あそこが……こわれる
        ぅぅぅッ!」

        あそこの中が火傷しているみたいにヒリヒリする。
        わたしは、逃れようのない恐怖に目を思いっきりひらいて悲鳴を上げ
        た。

        「早く慣れて下さい。痛みも後で振り返れば楽しーい思い出です。
        直にいやらしく鳴ける身体にして差し上げますからぁ。はははっ……」

        「うぐぅッ……こんな痛みが……ううぅッ、慣れるなんて……あるわけ
        ない……くぅぅぅぅぅぅぅッ!」

        強気の言葉もただの負け惜しみ。
        わたしに出来ることって、上下して突き刺すアレをただ受け止めるだ
        け……

        「ペースを上げますよぉ! 有里様のおま○こで、私の精液をこし取
        ってみなさい。そうでないと、いつまで経っても終わりませんからねぇ」

        腰の動きが、荒くダイナミックに変化した。
        突き出しては引き出し、わたしの膣の中で好き勝手に暴れ回っている。

        「んあぁぁぁぁぁっ、うぐッ……ハァァァン、だめぇッ!」

        なんなの今の声? まさかわたしの声……?

        辛い呼吸に紛れ込んだ甘い吐息。
        気が付けば腰の奥にジンとした疼きが広がっている。

        男の言葉は嘘じゃなかった……?

        ぬちゃっ、ぬちゅっ……ぬちゃっ、ぬちゅっ……

        「あんっ……うんっ……はぁんっ……」

        わたしの身体……何か変……?

        痛い刺激に甘く切ないものが混ざってくる。
        嫌なのに……辛いのに……またイクことを強要されるの……?

        「私の予言は当たったみたいですねぇ。
        あなたみたいな子供、どうにでも……ククククッ……」

        「ば、ばかにしないでぇっ! あ、あなたなんかぁ……あっ、いやぁん
        ッ……ヒッ、ひいぃぃぃぃぃぃッ……!」

        卑怯よ。こんなときにクリトリスをいじるなんて……
        この人、わざと敏感な処を刺激しているんだ。

        「今日のあなたはラッキーですねぇ。この私自らのサービスを、こんな
        に受けられるとは……ふふふふっ……感謝して鳴きなさい」

        「あっ、あっ、あぁぁぁんッ……そ、そんなッ……激しいぃぃッ!……
        んぅぅぅぅぅッ」

        「そうです。もっともっと感じて……
        淫らに堕ちていく姿を私に見せて下さいッ……!」

        副島はヒザ裏から手を離すと、わたしの腰をしっかり抱え込み激し
        く腰を揺らした。
        反り返った堅い肉の棒がわたしの膣の壁をえぐるように、何度も何度
        も往復していじめた。

        ぬちゅっ、ぬちゃっ、ぬちゅっ、ぬちゃっ、ぬちゅっ、ぬちゃっ、ぬち
        ゅっ、ぬちゃっ……

        「はうぅぅぅぅっ、だ、だめぇぇぇっ……! あそこがッ……あついの
        ぉっ」

        だめ、頭を何度も激しく振ったのに……
        気持ちよすぎて、快感が……広がってきて止められない。

        心が……淫ら色に染まっていく。
        このままじゃわたし……変になっちゃう。

        「抵抗しても無駄ですよぉ。既に、あなたのおま○こは息子の虜です。
        痛みなんて全然感じないでしょう。ほぉら、こっちはどうですぅ」

        「ひぁぁぁぁぁっ、お、オッパイは……ダメェェェェェッ……!」

        いつのまに……
        乳房が手のひらで覆われてムニムニと揉まれて、乳首をひねられた。

        ……わたしの乳首……固くなってる。
        うそっ、今度は爪を立てられたッ!

        ……もうだめ。
        全身が燃えるように熱い。

        毛穴中から汗が吹き出して副島が腕を滑らせた。

        「手の掛るお嬢さんだ」

        副島は腰に回した手をソファーの背もたれに持ち替える。

        「これで安定しました。派手に突かせてもらいますよぉ」

        男の上半身が近くなり遠くなる。
        男の腰に合わせてわたしも腰をリズムよく振っていた。

        ぬちゃっ、じゅちゅっ、ぬちゃっ、じゅちゅっ、ぬちゃっ、じゅちゅっ、
        ぬちゃっ、じゅちゅっ……

        「いやぁんっ、はうぅぅぅんっ、わたしじゃなくなるぅぅッ!……はぁ
        ぁぁっ」

        セックスってこんなに気持ちいいんだ。
        こんことなら、もっと早く誰かと経験すればよかったかな。

        身体が……快感の波の中でふわふわして、心が溶けて無くなりそう。
        ほら、あそこから流れ出したお汁が、太ももを伝ってお尻の下に水た
        まりを作っている。

        ……こんなになってるんだ。
        なんだか恥ずかしい。

        「ふっ、もう少しです。いいですよぉッ!」

        腰が振り子みたいに高く持ち上がって、大胆なフォームでわたしのあそ
        こに打ち込まれていく。

        ちょっと馴れてきたのかな……?
        それとも膣が敏感だから……?

        わたしに突き刺さる肉の棒が、一回り太くなって堅くなった気がする。
        そして、副島の顔に理性を失った笑みだけが漂っていることに不安を
        覚えた。

        …… ……?!
        ……まさか!

        頭の中を悪夢のシーンがよぎった。
        冷水を頭から浴びせられた気がして、快楽に遊ばれていた精神が意識
        を取り戻し始めた。

        赤ちゃん、赤ちゃん、赤ちゃん、赤ちゃんっ……?!

        この年で、未婚の母になってたまるもんですか。
        ……快楽の悪魔さんには、出て行ってもらうことにする。

        副島の腰が高々と掲げられて、照明の下で巨大なシルエットになる。
        その中心で鈍く光る蛇の鎌首がトドメをさそうと照準を合わせた。

        ダメッ! 中に出さないでッ! ……妊娠しちゃうッ!

        わたしは、動かない両手に代わって必死で両足をバタつかせた。
        偶然なのか、カカトが、腰を引き出し無防備な副島の脇腹にグイッと
        食い込んだ。

        その瞬間、何が起きたか分からずに顔をしかめる副島のあごを、わたし
        の頭がアッパーカットのように突き上げた。
        ゴツンッと、前頭葉に鈍い痛みが走って、思わずのけ反っていく副島の
        上半身が目に飛び込んでくる。

        ……今よッ!!

        俊敏な動きで男の下をかい潜って、身体を横に一気にスライドさせる。
        視界に光が差した。
        ……助かったの?

        「あッ……くそぉッ……!」

        副島の無念そうな声にわたしは上を向いた。
        獲物を取り逃がして寂しく宙を彷徨う肉の棒に限界がきたみたい。

        「ああっ……出るぅッ……」

        どぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅっ、どぴゅーッ……!

        落胆した惨めな呻き声を残して、膨張した肉の棒は白い液を空から撒
        き散らした。
        目標を見失ったように精液は、放物線を描きながらソファーを、わた
        しの肌を、満面なく点々と跡を残して降り注いだ。

        「はあっ、はあぁっ……はぁ……はあ……」

        わたしは赤く染まった乳房を大きく上下させながら、荒い呼吸を落
        ち着かせようとした。
        うつむくと、肌を白い斑点が線を引いて垂れている。

        赤い手形の跡がくっきり残る、わたしのオッパイ……
        副島の責めを一身に引き受けて、乙女の象徴も失ったわたしの秘所……
        そして、引き締まった自慢の美脚も……
        みんなみんな、その至る所に男の精液がべっとりと付着して白い肌
        を汚していた。




さよなら バージン























(十三)


八月 十一日 月曜日 午後十時  早野 有里
  


        「天国に登った気分はいかがでしたかぁ?  随分とはしたなく、お乱れに
        なりましたが……
        では、そろそろ次のステージへ参りましょうかぁ」

        副島は三つ目の行為の主役を紹介しようと、下品に腰を振り第三幕の開
        始を宣言した。

        「では今日のメインディッシュ……早野有里の処女喪失ショーをご覧下
        さい」

        わたしは火照った肌をいたわるように、ゆっくりと身体を起こすとカメ
        ラを見つめた。

        随分と品の無い紹介……
        ハイライトらしい表現って出来ないのかしら……
        ここが一番の見せ場なんだよ。
        もっと、こう……
        可憐な美少女有里の、世紀の初体験ショーとか……

        ちょっとニュアンスが違うって……?
        いいのよ。
        こっちの方が夢があるの。
        わたしの大切なものを捧げるんだから、せめて見出しだけでもね。
        それに……ううん、なんでもない。

        わたしはモニターを見るふりをしながら、黒目を左右に走らせた。

        ……長さは……15センチくらい……? 
        ……太さは……大したことない……あれは見掛け倒しよ。
        でも……始めてはやっぱり痛いのかな……?
        聞いた話だと、指のつけ根を思いっきり引き裂かれる感じとか……

        …… ……!
        いやだ、思い出すんじゃなかった。

        一層のこと、可愛らしくお願いしてみようかな……
        初めてなので優しくして下さいって……
        そうしたらどんな顔するだろう……この人……

        「いいですねぇ、その虚ろな表情。ゾクゾクしますねぇ。
        有里様の今の気持ちを当ててみましょうかぁ……?
        処女を失うことに後悔している……どうですか……?」

        なにを自慢したいのか、腰のアレを意味もなく揺らして、副島はツマラ
        ナイことを聞いてきた。

        「……ちょっと外れてる」

        バカバカしい態度の質問には、一言クールに……
        男の人って……案外単純ね。

        でも……虚ろな気持ちは確かだし、今がチャンスかもしれない。
        心を霞が覆っているうちに……さあ、処女喪失といきますか!

        わたしは、お尻をもぞもぞ動かして座り直すとソファーに背中を密着さ
        せた。
        そして、立てひざのまま両足をひらいていった。

        「するなら、さぁ……早く……して下さい……!」

        これってM字開脚っていうんでしょ。
        ……大胆よね。

        でもわたし……いやらしい液で汚れた性器を丸出しにして、なにも感じ
        なくなっている。

        それどころか、副島の視線があそこに集中しているのになんだか誇らし
        い気分。
        さあ、見たいなら見なさいって……そんな感じ……

        「ほぉーぉっ、驚きました。覚悟は出来ているようですねぇ。
        まさか、ご自分から股をお開きになるとは……。
        それでは、ご要望にお応えしないわけにはまいりませんねぇ。
        では、せいぜい残り少ない生娘の時間をお楽しみください……クククク
        ッ……」

        副島の両腕が腰に回され、わたしの下腹部が座席の先端までグッと引き
        出された。
        そして、ひざ裏に手を当てると肩近くまで高々と押し上げていく。

        「くっ、苦しいッ……」

        わたし、身体は柔らかい方だけど、さすがにこの態勢はきついよね。
        胸が圧迫されて呼吸が苦しいし、ひざ裏の腱も限界まで引っ張られてい
        る。

        それに……さっきの誇らしい感覚はやっぱり勘違いみたい……
        こんなのメチャクチャ……恥ずかしいわよっ……!

        ……だって。
        副島の息が、すーっとあそこを撫でてるんだよ。

        「せっかく開発してあげたのに、また閉じちゃいましたねぇ。
        まあ、無毛の恥丘に一本の割れ目……幼女っぽくて私は好きですよぉ。
        薄い恥毛に感謝しなくてはなりませんねぇ。
        ……ただ、このエッチな汁は余計ですよ。
        これのせいで淫らなおま○こに見えてしまう……残念ですぅ」

        ……やっぱり。思いっきり見られている。
        それに何よ……
        あなたの好みなんて、わたしには関係ないじゃない。

        悔しいけどもう1回催促してこんなの早く終わらせないと……辛くて我
        慢できない。

        「さあ、何してるのよ。わたしの処女を奪うんでしょ……!」

        目を細めて、フンッと鼻を鳴らして……余裕って顔で……それなのにお
        でこから汗がツーッと流れた。

        「いい覚悟です」

        副島のアレがピクンと脅すように反り返り、狙いを定めた。
        先端から滑りのある液体を涎のように垂らして……

        あれが……わたしのあそこに……?

        ガタガタと肩が震えて目をそらしてしまう。

        でも、負けたくないよね……あんなの何ともない。
        ……そうよ。女の子ならみんな経験するんだから。

        痛いのは最初だけ……
        大きそうに見えるけど、あんなの肉の塊……見掛け倒しに決まってるわ。
        大丈夫よ有里。さあ、前を向いて……

        わたしは、心の声の後押しで前を見続けた。

        「ものすごぉーく、痛いですよぉ」

        ものすごぉーく余計な一言を残して、副島の身体が前傾姿勢になる。
        ……腰が前に突き出される。
        涎を垂らした肉の棒が割れ目の入り口をこじ開けた。

        つぷっ……!

        「グッ、アグッ……うッ、くッ……!」

        ビクンと身体が跳ねて、膣が急速に強張ってくるのがはっきり分かる。
        でも……逃げないから……腰も引かないから……

        わたしは揺らいだ視界のまま、副島の背中越しにカメラのレンズを睨ん
        でいた。

        今から、目の前の男に処女を奪われる。
        悔しいけど仕方ないと思っている。
        ……でもね。
        カメラの映像を見ているだけの人は、この肌に触れることさえできない
        でしょ。
        ……もっと悔しいでしょうね。
        ……そこでじっと見ていなさい。
        わたしは絶対に、あなたたちに……負けないから……!

        息が乱れて胸の鼓動がこれでもっていうくらいに早くなって……あそこ
        の神経もいやというほど過敏になっている。

        ……まだ、そんなに痛くない。
        ……でも、痛いのは、きっとこれから。
        ……やだ、ひざが震えてきた。

        「有里様にとって一生に一度の大切な思い出を、この副島がムチャクチ
        ャにしてあげますからねぇ……ははははっ……」

        副島は人でなしの言葉を残すと、アレの位置を固定しグッと腰を押し出
        した。
        「ヌチャッ」て、恥ずかしい音がして割れ目の中に先端が沈む。

        「アァッ、んんんぐぅぅぅっ……はうぅぅッ……!」

        痛さよりも大切な処を壊される恐怖に声を上げそうで、歯を食いしばっ
        て眉間にシワを寄せて必死で堪えた。
        この人を喜ばせるような哀しい声は出したくない。

        「そそりますねぇ。その表情……」

        副島は、声を上ずらせながら太い杭を更に沈めた。

        ズズッ……ズズズッ……!!

        1秒2秒がとんでもなく長い時間に変わり、鈍い嫌な痛みがじわじわと
        膣から下腹部へと拡大していく。

        見せたくない涙が、ほっぺたを伝い上唇をかすめて……
        それに気が付いた副島は一言つぶやいた。

        「もっと嬉し涙を流させてあげますよ」

        意味はわかっていたし、身体が直ぐに教えてくれた。

        ……処女膜が……破られるッ!

        ズズッ……ズブッ……ズズッ……ズブッ……!!

        そして、肉を切り裂くような激痛が脳天まで突き上げてくる。

        「ンアァァァァァァッ、いっ、痛ッ!……あうぅぅぅぅぅぅッ……」

        くちびるを血が滲むほど噛んでも、前歯を思いっきり噛みしめても、生
        まれて初めて経験する激しくて哀しい痛みに心までぼろぼろに切り裂か
        れそうになる。

        わたしの処女ッ! わたしのヴァージンが……消えて亡くなる……

        「うッ、うぅぅぅぅぅぅッ!!……アグッッッッッッッ……グッ…クッ
        ッッッッッッ……!!」

        まるで獣のような呻き声。
        わたしの身体の中を太い男のアレが、ミシミシと音を立てながら突き進
        んでいく。

        ぷちっ、プチッ!……ぷちっ、プチッ!……

        処女膜を切り裂く音が心のどこかで聞こえた。

        さようなら……わたしのヴァージン……

        副島は顔を狂気で満たしながら腰を突き出し、トドメを刺そうとわたし
        の背中を手前に引き寄せた。

        ズブッ、ズズッ……ズズッ、ズブッ……ブチィッ!!

        「ヒギッッッッッッッッッッッッ!! いっ、痛イィィィィィィッ……
        ヒグッッッッッ、あぐっっっっっっっ……!!」

        聞くに堪えない絶叫に近い悲鳴……
        男のアレが根元まで埋没し、裂けた股間から鮮血と淫水が滴り落ちてい
        く。

        わたしの……有里の心のヒトカケラが……どこかへ飛んでいく。

        「うぅぅぅぅぅっ、ングッッッッッ!!……はぁッ……グゥッッッッッ
        ッ!!」

        穴の壁を刃物で削り取る痛さに、言葉にならない呻き声があがる。

        「見なさいッ! 有里様の処女喪失の瞬間ですよぉ! 
        初体験の気分は……いかがですかぁ……?」

        副島は愉快そうだった。

        わたしの苦しむ顔、姿が、嬉しくてたまらないのだろう。
        もっと苦しんでくれと……

        でもね……こんなことぐらいで、わたしの心は折れないから……
        わたしの心を……舐めないでよッ!!



絶頂























(十二)


八月 十一日 月曜日 午後九時四十五分  早野 有里
  


        5分後、わたしは副島に向かい合うようにソファーに座らされていた。

        でも、こんな座り方……お父さんが見たらきっと怒るだろうな。
        年頃の娘がはしたない。足を閉じなさいッ!って……

        わたしも、こんな格好いやだよ。

        背もたれに身体をを押し付けて、両足をいっぱいにひらかされて、あそ
        この中まで男の目にさらすなんて……
        死んでしまいたいくらい恥ずかしい。

        「さっそく感度調査とまいりましょうか。ねえ有里様」

        わたしは、怖くて仕方ないのに強気を装ってじっと前を向いた。

        胸とあそこ……どっちを触られるの?

        できれば……ふくらみを包み込むように優しく触れて欲しいな。
        ……ささやかな希望だけどね。

        ……でも、そうはいかないみたい。

        「イッ、イヤッ……ひいぃぃぃぃぃぃぃぃっ、そこはッ……ダメぇッ!」

        突然、デリケートな処から強い電流が流れた。
        わたしは甲高い悲しい声で鳴かされて、背中を湾曲するように大きくし
        ならせた。

        いきなりクリトリスなんて……ひどい……

        そこはものすごく感じやすいんだよ。
        最初くらいもっと優しくして欲しいのに……

        「これは失礼……あなたのお豆ちゃんが卑猥な顔をしているもので、つ
        い……」

        お豆って……いやらしいッ!
        それにいつまで……あぁっ、また電流がはしるぅッ……!

        「ハウゥゥゥッ! くぅぅぅぅぅぅぅぅッ……許してッ……うぅぅぅっ
        ……」

        指のお腹がクリトリスの頭を撫でて……イヤァッ、摘まれたッ!

        副島は、わたしの両足の間に身体を滑り込ませて座席部分に上半身を密
        着させている。

        ……つまり、足の抵抗も封じられたってこと……?

        「おやぁ、皮のフードが脱げかかっていますねぇ。
        暑いでしょうから剥いて差し上げましょう」

        「ヒイィィーッ。これ以上、クリトリスに触らないでッ! 許して……」

        ズキンッ! ズキン!って、頭まで一直線に電気が走る。
        ……助けて! 許して!……そうでないと、あそこが……熱を帯び始め
        てる。

        わたしは悶えさせられながら、ひたすら冷静さを取り戻そうと詰まり詰
        まり呼吸を繰り返した。

        「有里様の未熟な林檎を熟させましょうね」

        下から声がしたと同時に、今度は胸に激痛が走った。
        副島の指がわたしの乳房を鷲掴みにして、お餅じゃないのに……丸めて
        揉んだ。

        「いっ、痛いッ! もっと優しく……お願い……」

        ここは発育途上なの…… あなたのやり方はただ痛いだけ……

        叫びたいけど叫べない。
        ……言葉が途切れ途切れになってしまう。

        「なーに言ってるんですかぁ。未熟な林檎をどうしようが、私の勝手で
        す。まだまだいきますよぉ。それぇっ……!」

        「はうぅぅッ、ううぅぅッ、わ、私の……胸は、り、りんごでは……あ
        りません、くぅぅぅぅぅッ……!」

        白い肉が指の隙間から押し出された風船のようにこぼれて、噛みしめた
        歯の隙間から悔しいけど悲鳴が漏れてしまう。

        「かなり辛そうですねぇ。おっぱいは痛いですかぁ……?」

        わたしはうんうんとうなづいた。

        「それなら鞭の後は飴といきますかぁ。その代わり、いい声で鳴いてく
        ださいねぇー」

        副島の指が恥ずかしい繊毛の先でもぞもぞと動いた。

        「やっ、ダメェェェェッ……指を抜いて……ひっ……ヒイィィィィィィ
        ィィッ!」

        言葉通りわたしは鳴かされ背中をピンとのけぞらされ、あそこが切ない
        道具に変えられていく。

        「有里様のおま○こ……暖かくて気持ちいいですよぉ。
        お礼に、ヒダヒダを掻いてあげましょうねぇ」

        「あひィィィッ……ヒィィィィーッ……!」

        あごを突き出して喉元まで露わにして、刺激を受け流そうとしたけど……
        もう、だめ……

        「どうやら感度はいいようですねぇ。
        ついでですから、有里様を絶頂まで導いて差し上げましょうかぁ……?」

        わたしは、首を左右にブンブンと振った。

        「いえ、遠慮はいりません。それに……ほらぁ……」

        目の前に突き出された2本の指先……
        照明の下でテカテカと反射して、指どおしが離れると細い糸を何本も引
        いて……
        わたしは悔しくて悲しくて……顔を横に向けた。

        「やれるものなら……やってみなさいよ……」

        全然迫力はないけど、一応、言っておいた。
        ……これって、勝気なわたしの意地かもしれない。

        ぐちゅっ、ぐちゅっ……ぐちゅっ、ぐちゅっ……ぐちゅっ、ぐちゅっ……

        「うッくぅぅっ……くぅぅぅっ……んんッッッッ」

        噛みしめた前歯から、苦悶? な呻き声が漏れて……
        ロープに縛られた手首を痛みを無視するようにこすり合せた。

        「乳首とクリトリス、それに肉ヒダを引っ掻いているんですよぉ。
        有里様、さぁ我慢なさらずに……あまーぃ声で天国におイキなさい」

        痺れて甘くてゴチャゴチャの刺激が、肌の表面を掻きむしるように駆け
        巡っている。

        こんなのッ、こんなものッて、堪えようとしたけど……
        もうどこが性感なのか、区別もつかないくらい気持ちよくなってくる。

        わたしに意地があるなら、この人にもあったみたい。

        ぐしゅ、じゅちゅっ、ぐしゅ、じゅちゅっ、ぐしゅ、じゅちゅっ、ぐし
        ゅ、じゅちゅっ……

        「だっ、ダメぇぇッ!……そんなぁ、きつく……ふあぁぁぁっ……」

        「今のは……甘い吐息というやつですか。さぁ、もっとお出しなさい」

        「はあぁぁ、ああぁぁぁっ……ひどいっ、こんなことされたら……誰だ
        ってぇ……はあぁぁぁぁっ」

        乳首とクリトリスを同時に撫でらている。
        今度は爪先で……

        コリッ、ススッ、コリッ、コリッ……

        こんな気持ち生まれて初めて……
        オッパイやクリトリスがこんなに気持ちよく感じるなんて……
        それに、いやらしいお汁がさっきから「チュプッチュプッ」て水音を立
        てている。

        「もっと自分に素直になりなさい。ほらぁ、太ももやツマ先が痙攣した
        みたいに伸びたり縮んだりしているのが、あなたにも分かるでしょ」

        「はうんんっ……ふぁっ、あぁぁぁぁっ、そんなぁぁっ、いいぃぃぃぃ
        ぃぃっ!」

        早くイカセテ……早く楽にして……
        わたしは甘い吐息にまぎれさせてこっそり叫んでいた。

        「もう少しですよぉ。頂上が見えてきたでしょ。
        さあ、気にせずにイキなさい。生娘最後の絶頂を……私に見せて下さい」

        わたしは今、オナニーをしているの。
        拘束された両手に代わって、副島の指が勝手に快感を運んできてくれる。

        乳首を弾かれて……クリトリスをノックするように叩かれて……
        割れ目に沿うように、カギになった指先がデリケートな内壁を引っ掻いて……
        わたしがするより、全然……気持ちいい。

        「はあぁぁぁぁんっ!……ンハッ、いいぃぃぃっ、かっ、感じるぅぅぅ
        っっっっ……ふあぁぁぁっ!」

        わたし、気が付いたらあそこを突き出していた。
        おまけに両足をこの人の腰に絡めて、ハシタナイ……でも止められない。

        後もう少しだから……

        わたし小声で叫んだ気がする。「イ……カ……セ……テ……」と……

        副島は、うんとうなづいてから口をひらいた。「ようこそ、天国へ……」と……
        そして軽蔑するように笑いながら、膣の入り口に指を突き立てた。

        ヌチュッ、ぬちゅっ、ヌチュッ、ぬちゅっ、ヌチュッ、ぬちゅっ、ヌチ
        ュッ、ぬちゅぅッ!

        「あっ、あっ、あっ、ぁぁぁぁぁッ……イクッ、イクッ、イクッぅぅぅ
        ぅぅぅぅぅッ……!!」

        わたしは満足そうな笑みを浮かべた。
        そして、甘い声で絶叫しながら身体を何度も仰け反らせて、両足をピン
        と引き伸ばした。

        一瞬、目の前が白くなる……
        キューッと、あそこが締まって力が抜けていく……

        それから、うーん、それから……なにが起きたか……覚えていない……
        やっぱり……わたしのするオナニーより……ぜんぜん良かった……

        後は……?
        ……ちょっと思い出した。

        わたしは……思いっきり叫んでた。
        でも、その声は聞き取れないし……聞こえない。

        わたし……変なこと……しゃべってないよね。
        ……他に、なにかあったかな?
        ……あ、そうだ……

        なんだか……ふわふわした風船の中で……あそこから溢れ出したお汁が
        お尻に引っ付いて……気持悪かった……
        後は……忘れた……



        「はあぁぁっ、はぁーっ……はあぁぁっ、はぁーっ……」

        わたしは、仰向けのまま胸のふくらみを上下させてソファーに横たわっ
        ていた。
        だらしなくひらいた太ももが、激しい運動をした後のようにピクリピク
        リと痙攣を繰り返している。

        おでこに浮かぶ大粒の汗と乱れて張り付いた黒髪……
        潤んだ瞳に半開きのくちびる……それに風呂上がりのような桜色の肌……

        でも……今は何も聞かないで……お願い……
        そして、わたしの気持ちに……何も言わずに寄り添って欲しいの……
        きみが傍にいるだけで、失いかけた希望と勇気が復活する気がする……
        ふたりで一緒に……最後の試練を乗り越えましょ。




哀しみのファーストキス























(十一)


八月 十一日 月曜日 午後九時三十分  早野 有里
  


        「そろそろ、ショータイム第二幕を始めましょうかぁ」

        副島の芝居じみたハスキー声が部屋中に響き渡り、わたしはソファーの
        上で仰向けのまま、まぶたをひらいた。

        どうしてわたし、ここで寝ているんだろう。
        ……確か、副島の前で服を脱いで裸になって肌を見られた気がするけど、
        その後のこと……よく覚えていない。

        「有里様、あなたは偉いですねぇ。
        まーさか、ご自分でおま○こをさらけ出してくれるとは……私、副島、
        感服致しました。そのお礼といってはなんですが、今度は私のストリッ
        プショーをお目に掛けたいと思いますので、どうぞご覧のほどを……」

        副島の嫌みたーっぷりの言葉も、それに続く衝撃発言も何か上の空……
        この人なに言ってるの? って感じ……

        ……ストリップ?

        ストリップならわたしがしてあげたでしょ。1枚1枚、色っぽく丁寧に……
        だから今でも裸なの……

        他に誰が……何か変ね。
        あの人……何してるの……?

        ……?
        ……?……?
        ……?……?!……!
        ……て、エーッッッッッッ!!

        今、ズボンを脱がなかった? 続けてワイシャツもぉッ……!?
        ちょっと待ってよぉッ……下着まで……!?

        副島は、わたしの目の前で見せつけるように服を脱いでいく。

        ……いや、これ以上見てはいけない。

        わたしは手のひらで顔を押えて「ヒーッ、な、なにを……してるのッ!」
        って、定番通り叫んだ。

        どうしてかって……?

        わたしが女の子だから……

        あっ、シャツもパンツも脱いでるぅッ……!

        なぜ、分かるのって……?

        そんなの聞かないでよ。好奇心かな……こうきしん!!

        「なぜ、顔を隠すのです……? さあ、しっかり私を見なさい」

        副島はストリップし終えると、わたしと向きあう形で仁王立ちしている。

        「きゃッ、キャアアァァァッ……イヤァァーッ!」

        わたしはもう一度悲鳴を上げながら、指の隙間から目に入る光景に驚き
        と恐怖を感じていた。

        初めて見た男の人の身体……
        服の上からは想像つかない、厚い胸板と引き締まった腹筋……
        そして、見てはいけないと思いながら見てしまった男の下半身……

        あれが男の人の……?

        わたしのモヤモヤと違って、ふさふさとした黒い茂みの中から赤黒い棒
        が天を突くように上を向いている。
        まるで獲物を狙う蛇の鎌首のよう……

        嫌ッ、想像していたものと全然違う。

        ……あれがわたしの中に? ……そんなの、うそでしょ?!

        頭の中が恐ろしい想像を押し付けてきて、下半身を勝手に強張らせてし
        まう。
        せっかく残っていた僅かな希望が小さな氷のカケラのように溶けていく。

        「有里様、何を怯えているのですぅ。怖がる事なんてありません。
        ……さあ、私の息子を見て下さい」

        この人、そんなことを言って恥ずかしくないの? 
        それとも興奮してるから……?
        どうしたらいいのよ。

        わたしは顔を覆ったまま必死にあとずさって、壁に背中を押し付けてい
        た。
        一方副島は、一歩一歩ゾンビのように間を詰めていく。

        「もう逃げられませんよぉ。さあ、挨拶の口づけを……」

        なんで突然キスなのよ! さっきと言っていることが違うじゃないッ!

        逃れようとするわたしの肩が掴まれ、身体ごと抱き寄せられる。

        「ちょっと待って……! まだ、気持ちの整理が……お願い……」

        でも言うことを聞いてくれそうもない。
        その証拠に、両手は封じられ男の唇がわたしの目の前に……

        ……これがファーストキス?
        もっと夢のような甘い世界だと思っていたのに……

        でも現実は……ポニーテールを引っ張られ、あごを突き出す惨めな姿。
        そして唇がわたしの唇を奪った!

        ムニュッ!……ムニュゥッ!……ムニュ、ムニュ……

        「むぅぅぅッ、ううぅぅッ……むうぅぅぅぅぅッ!」

        声が出せないし息も苦しい。
        そして、この人の鼻息がホッペタからオデコに容赦なく降り掛かかって
        くる。

        わたしは抵抗しようと、言葉にならないくぐもった悲鳴をあげ続けた。

        ……でも、これが失敗。

        レロッ、れろっ、レロッ……ジュプッ、レロッ……レロッ、れろっ……

        副島の舌が前歯の隙間をこじ開け、わたしの舌に絡みつき唾液を流し込
        んでくる。

        ……気持ち悪い。許してよ……

        でも、叫んでも出てくるのは悲しい呻き声だけ……
        その間も、わたしの口の中は副島の舌に玩具みたいに扱われた。

        前歯から奥歯まで虫歯の検査のように舌先が叩いたかと思えば、歯茎の
        内側を右から左、左から右へと好きなように撫でられこすられる。
        わたしは歯医者さんが嫌いなの。だから出ていってと、叫びたいけど……
        副島の舌に声まで押し返される。

        これじゃ、まるで未来のわたし……

        処女だった舌は犯されて嬲られて……更に大量の唾液が追加みたいに送
        り込まれて……
        気持ち悪くて吐き出しそうで……混ざり合ってどちらの唾液か分からな
        いものが、口一杯に溜まっていって……
        このままだと唇から溢れていく……

        「うぐゥゥゥッ、ぐぐぅぅッ……むぐぅぅぅぅぅッ!……」

        今出来ることは辛いけどこれだけ……

        わたしは瞳を閉じて喉をかすかに鳴らした。

        「ゴクッ」と、はかない響きを残して、副島とわたしの体液が口の中か
        ら消えていく。

        ファーストキスは甘酸っぱいレモンの味……

        このフレーズを話せない口で何度も唱えた。
        そして、やるせない思いを胸の内でつぶやいた。

        (さようなら……わたしのファーストキス……)

        「うげぇっ、ごほぉっ、ごほっ……うっぐっ、はあ、はぁ……」

        口の端から溢れた白いあわ粒の液体が、ダラダラと流れ落ちてくる。
        わたしは、男の目を気にしながら少しでも新鮮な空気を吸いこもうと鼻
        腔を大きくひらいた。

        「私とのキスは有里様の大切な想いでとして、いつまでも残して下さい
        ねぇ」

        副島は、キャビネットの引き出しから何かを取り出しながら話し掛けて
        きた。

        こう言う人って……本当に空気が読めないのか?
        それとも、わざと怒らそうとして言っているのか?

        ……きみはどっちだと思う?

        こんな状況で有里も余裕だねって……?

        本当にそう見える? 
        ……だったら、きみを殴っていいかな。

        ちょっとは、わたしの気持ちを察してよッ!



        「有里様。これ、何だか分かりますぅ……?」

        わたしがファーストキスの衝撃から立ち直れないのを知っていながら、
        副島は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

        こういう場合は、期待しないで男の手に持つ物を見てあげる。

        ほらね、次は何をされるのか大体分かってしまった。
        だから先手を打って言ってあげた。「縛るのね」って……

        見てよ。副島の以外そうな顔……
        さっきの恨みが晴らせたみたいで、気持ちいいよね。
        わたしだって、こんな場面で束になったロープが出てくればわかるわよ。

        それで何をするのって……?

        ……決まっているでしょ。SMよエスエムッ!

        男の人がロープで縛った女の人を鞭とローソクで苛めるのよ。
        わたし、写真で見たことが有るんだから。

        今からそれをするのかって……?

        ……そんなこと……あるわけないでしょ!
        ……だって怖いし、痛そうだし……ちょっと経験するのは早いと思うし
        ……

        「有里様、そんなに顔を赤くしてなにを想像しておられるのですかぁ?
        ふふふっ……あなたが思い浮かべているものと違うかもしれませんが、
        落胆しないでくださいねぇ。
        残念ながら、今回は両腕を拘束するだけなのであしからず……」

        わたしがなにか期待しているとでも……
        馬鹿にしないで欲しいわ。
        ……でも、ちょっと安心したりするけど。

        「それで、どうすればいいの……?」

        わたしは副島の指示に従い、両手を後ろに回し腰のあたりで手首を重ね
        合わせた。

        シュルッ、シュルル……シュル……シュルル……

        肌に食い込む縄の感覚とロープのこすれる音に、思わず身震いさせられ
        る。

        「うっ、きつーいッ……少し……緩めて下さい」

        「だめですよぉ、それではぜーんぜん意味がありません。
        少しは我慢して下さーい」

        こんなバカバカしいやり取りの後、わたしは時代劇の罪人のようにモニ
        ターの前に立たされた。

        ……これが……わたし?

        全裸の身体を後ろ手に縛られて頼りなさそうに腰を引いた姿で、胸だけ
        を強調するように前に突き出している。

        ……こんな惨めな姿を見ていると本当に自分が罪を犯した罪人のように
        思えて、モニターから顔をそむけた。

        「有里様、そんなにおっぱいを突き出して恥ずかしくないですか? 
        それとも、私に早く気持ちよくしてもらいたいとか……」

        いるのよね、こういう嫌味な人って……
        だから言い返した。

        「あなたって、本当に最低ッ! あなたがそう思うなら……やればいい
        じゃない。わたしは負けないんだから……!」

        そうよ、負けない。

        ……でも、威勢のいい言葉とは逆さまに胸の中に重りがぶら下がってい
        るようで、気持ちがマイナス方向にどんどん傾いていく。

        何とかしないと……

        焦るわたしが出した結論は「さあ、早くしてください……!」
        男に催促することだった……



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